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アルコール依存症の相談機関とその特徴

      2016/12/10

アルコール依存症の相談機関とその特徴

保健所でのアルコール依存症の相談

保健所の目的
保健所は、「地域保健法」に基づき、地域住民の健康の保持及び増進を目的とし、都道府県、政令指定都市、中核市、その他の政令で定められた市又は特別区が設置している公的な機関です。
保健所の行う事業につき「地域保健法」は14の事項をあげていますが、このうち、アルコール依存症に関する問題は精神保健に関する事項に含まれています。地域保健法があげている保健所の事業についての事項は、1.地域保健に関する思想の普及及び向上に関する事項、2.人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項、3.栄養の改善及び食品衛生に関する事項、4.住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事項、5.医事及び薬事に関する事項、6.保健師に関する事項、7.公共医療事業の向上及び増進に関する事項、8.母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項、9.歯科保健に関する事項、10.精神保健に関する事項、11.治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健に関する事項、12.エイズ、結核、性病、伝染病その他の疾病の予防に関する事項、13.衛生上の試験及び検査に関する事項、14.その他地域住民の健康の保持及び増進に関する事項、である。
また「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」には、保健所における精神保健福祉相談に関し、都道府県、保健所を設置する市又は特別区は、必要に応じて医師、精神保健福祉相談員その他の職員をして、精神保健及び精神障害者の福祉に関し、精神障害者及びその家族等からの相談に応じさせ、及びこれらの者を指導させなけれぱならないことが記されています。さらに、「保健所及び市町村における精神保健福祉業務運営要領」では、保健所は地域精神保健福祉業務の中心的な行政機関として、入院中心のケアから地域社会でのケアに福祉の理念を加えつつ、精神障害者の早期治療の促進並びに精神障害者の社会復帰及び自立と社会経済活動への参加の促進を図るとともに、地域住民の精神的健康の保持増進を図るための諸活動を行うものとする、とされています。

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アルコール問題に対する相談
我が国には592ケ所の保健所があり、精神保健福祉相談や酒害相談、アディクション相談などの名称でアルコール問題に対する相談を実施しています。

アディクション(嗜好)とは、自分ではやめようと思うが、やめることができない習慣性をもつ行為。アルコール依存、薬物依存、ギャンブル依存、買い物依存、セックス依存、ニコチン依存などが知られています。

ここでは東京都板橋区で実施されているアルコール問題に対する相談や方法、過去の相談件数などを見てみましよう。
東京都板橋区は東京都の北西部に位置し、人口は約52万人、面積は約34平方キロメートルです。区内のほとんどを住宅地域と商業地域が占め、その一部に工業地域が点在する都市型の自治体です。板橋区では5ケ所の健康福祉センターが区内を分割担当し、保健所の対人保健サービス業務を実施しています。
アルコール問題に対する相談は個別に行われていますが、その他に、各健康福祉センターが分担して家族だけを対象としたグループアプローチを毎月2回、アルコール問題を抱える本人だけを対象としたグループアプローチを毎月1回、家族及び本人を対象としたグループアプローチを毎月2回実施しています。
さらに、地域の住民やアルコール問題を抱えている本人、家族、関係者などを対象とした講演会を毎年4回開催しています。
保健所では精神保健福祉に関する相談にあたるために精神保健福祉相談員を置くことができますが、板橋区では、保健所でのアルコール問題に関する相談は医師、精神保健福祉相談員、保健師があたっています。

保健所でのアルコール相談の実際
保健所で実施されるアルコール問題に対する相談は主に以下の3機能に分類できます。

(1)医師による医学的な判断と助言・指導
多くの保健所には、精神保健福祉相談を実施するために嘱託の精神科医師がいます。精神科医師による相談では、疾病の有無、治療の要否、適切な治療機関の情報、受診の勧め方などの相談が可能となります。
嘱託の精神科医師による相談は通常相談日と時間を設定して行われますので予約が必要です。

(2)健康教育
精神科医師によって疾病の有無や治療の要否が判断されると、アルコール問題をもつ飲酒者や家族、友人、知人などがアルコール問題に対する健康教育を受けることになります。ここで受ける教育内容は疾病に対する知識、治療方法、自助グループについての説明、家族としての対応方法が中心となります。教育は一回では終了せずに何度かに分かれて行われますが、保健所で基礎的な説明を受けた後に教育プログラムをもつ機関を紹介し実施することもあります。

(3)ケースマネジメント
アルコール問題の解決には従来から医療機関と自助グループが中心的な役割を果たしてきました。これら従来の社会資源に加えて、近年アルコール依存症者を対象としたデイケア、共同作業所、グループホーム、通所授産施設、福祉ホームなどいろいろな施設が作られ、地域で提供されるサービスも多様化してきました。一方、初めてアルコール問題に直面し困惑している飲酒者や家族などにとって、これら多様化したサービスを適切に使い分けることが困難になりつつあります。そのために、個人のもつ問題に適切に対処するためのケースマネジメントが求められるようになってきました。ケースマネジメントは保健所だけでなく、他の相談機関でも実施されています。

精神保健福祉センターでのアルコール相談

精神保健福祉センター(以下センター)は全国の都道府県や政令指定都市(区がある市)には必ず一ヶ所は設置されています。そこでのアルコールに関する相談は昭和54年6月に厚生省(当時)から出された「精神衛生センターにおける酒害相談指導事業実施要領」に基づいて行われています。その実施体制はさまざまで当事者(依存症回復者等)を含む専門のスタッフで実施しているところもありますが、大部分のセンターでは相談担当職員が他の相談もあわせて行っていることが多いようです。その内容は主に以下のことですが、通知が出されてからだいぶ年月が経っており、個別相談以外には行っていないところもあります。実際に利用する場合にはあらかじめ確認をされた方がよいと思います。

(1)個別相談
個別相談には、相談したい人がセンターに出向く「相談指導」とセンターの職員が家庭等に訪問する「訪問指導」があります。また、「相談指導」には電話によるものと面接によるものとがあります。一方、訪問指導はカバーする地域が広すぎるため、ほとんど行われていないのが現状です。

①電話相談
相談専用の電話番号があることが多いと思います。さまざまな名称で呼ぱれていますが、「酒害相談」専用のものと、他の相談と共有の、例えば「心の健康相談」等の名称で呼ぱれているものとがあります。
「酒害相談」専用の番号は少ないようです。また、共有の電話番号の場合は、回線の数が少ないため一件の相談に時間がかかると、非常にかかりにくいこともあります。根気よくかけ続けてみてください。
電話相談は、相手の顔が見えないためプライバシーを守りやすく、気軽に相談をするには適切な方法です。しかし一方では、そのことが限界となって相談の情報が限られ、その場での結論が出しにくいところがあります。また、相談をする人と相談を受ける人との関係性も浅いため、深く継続的な相談には向いていません。あくまで、きちんとした相談に入るための入り口と割り切って考えたほうが良いと思います。
したがって、その相談の内容は、主として具体的な相談をするのに適切な機関の紹介等の情報提供になることが多いと思います。

②来所相談
電話の相談だけでは限界がある場合には、精神保健福祉センターに来てもらって相談をすることがあります。その場合には2通りのことが考えられます。一つは、内容が複雑で直接会って相談しないと問題解決の糸口が見えてこない場合や、精神保健福祉センターで継続的な面接が必要だと判断した場合があります。もう一つは、本人向けの「酒害予防教室」や家族向けの「家族教室」等の精神保健福祉センターで実施しているプログラムに参加してもらうことを意図して、精神保健福祉センターにまず個別相談に来てもらうという場合です。

(2)集団指導
実施している精神保健福祉センターはさほど多くはありませんが、場所によってはアルコール依存症者本人のため「酒害予防教室」や酒害者の家族のための「家族教室」あるいは「家族講座」という名称で家族の集団指導を実施しているところもあります。
アルコール依存症からの回復には同じ経験をした仲間の存在が非常に大きいため、集団指導は回復への重要な手段の一つです。内容は、専門家による講義や話し合い等です。精神保健福祉センターで集団指導を実施していない場合でも、他の機関で実施されている集団指導のプログラム、あるいは自助グループを紹介されることも多くあります。

(3)自助グループヘの支援
アルコール依存症をめぐる自助グループはAA・アラノン(Al-Anon)・断酒会等がありますが、それらのグループヘの支援も精神保健福祉センターは行っています。会場の提供や例会・ミーティングヘの参加、会の運営への助言(断酒会)等がその主な内容です。したがって、これらの自助グループとの連携により、相談者への適切な情報の提供が可能になります。

(4)その他の事業
①保健所への技術援助
アルコール依存症への対応について保健所担当者への助言指導や研修会を開催したりしています。
②普及啓発事業
アルコール依存症に対する知識の普及啓発に関する事も行っています。パンフレットの作成や講演会の開催等を行います。
③その他
アルコール依存症に関する情報をもっていますので、専門機関・関連機関・参考図書・自助グループ等に開する情報もありますので問い合わせしてみてください。

医療機関でのアルコール相談

専門外来医療機関の特徴
日本におけるアルコール依存症の専門治療は、昭和3八年、国立久里浜病院アルコール専門病棟開設以降、久里浜方式をモデルとした入院治療が全国に普及し始め、昭和60年代にはいると専門外来医療機関が登場してきました。近年では、クリニックに併設するアルコール作業所もでき、アルコール依存症に対しての医療機関の治療援助は広がりをみせています。
ここではさいたま市にある白峰クリニックを一例にあげて、アルコール専門外来医療機関におけるアルコール依存症に対する治療援助の特徴を説明していきます。
白峰クリニックはアルコール依存症を含め嗜癖問題を専門に治療することを目的としたクリニックであり、アルコール依存症当事者やその家族を対象に、治療プログラムを行っています。当事者を対象にした治療は、次のようにその対象別に4つに分類されます。

1 アルコール性内科疾患や欠勤などアルコールに起因する諸問題はあるが、日常生活は維持されており、断酒が必要なのか、または断酒が可能なのかを模索している方への治療。
2離脱症状や連続飲酒発作が認められ、明らかにアルコール依存症ではあるが、日常生活は維持されており、日常生活を変える必要はないが断酒が必要な方への治療。
3内科的には入院には至らないが、生活が破綻しており、クリニックで一日をしらふで過ごすという、日常生活を変える形での断酒が必要な方への治療。
4専門病院にて入院治療や継続的なデイケア参加などにより、断酒継続してはいるが、社会復帰には至らない方への治療。

クリニックにおける治療対象別分散

クリニックにおける治療対象別分散

白峰クリニックには、併設のデイケアがあり、その中にアルコール依存症の方を対象としたアルコールデイケアがあるため、1のような問題を認め断酒するかどうかという迷いの時期から、4のような断酒を継続した上で、社会復帰を含め、しらふでの生き方を考える時期に至るまで、利用される方には幅があります。ゆえに、医学、心理、ソーシャルワーク、リハビリテーションまで含めての治療、援助を行っていることが、専門外来医療機関の特徴と言えます。
例えば、3の方の場合は、日中、アルコールデイケアを利用しながら、しらふの時間を経験することで、入院治療をせずに断酒を継続させていきます。言い換えると、従来の入院治療の代わりを外来治療で行うとも言えます。
次に、家族に対しての治療援助について述べます。入院治療の場合は、入院患者の家族として、家族が医療機関と直接関わることが多いでしよう。一方、専門外来医療機関では、依存症当事者のみの関わりで治療が進むケースも多いのですが、依存症当事者が医療にかかろうとしない、もしくは、断酒が継続しない家族の方が具体的な対応の相談を求めて来院する場合や、アダルトチャイルドとして自分の生きづらさの解決を求めてくる家族の方なども来院されます。ここでいう家族の状況とはさまざまであり、病気に対する心理教育的なサポートだけではなく、当事者のところで述べたように、個々のケースに応じて、医学、心理、ソーシャルワーク、リハビリテーションまで含めて家族に対しても治療援助を行っていることが、専門外来医療機関の特徴と言えるのではないかと思います。

クリニックの治療援助プログラム
次に、白峰クリニックで行われている治療援助のプロセスと、プログラムの概要について説明します。まず、援助のプロセスについては、次のような流れになっています。
1電話予約……氏名、主訴、紹介経路、紹介状の有無のみを確認します。
2初回相談、診察
3スタッフ間でケースカンファレンスにて、処遇方針を共有し、確認します。
4診察にて、医師とクライエントとの間で、処遇方針を共有した上で、必要に応じ、診察と並行して他の治療プログラムヘの導入になります。
初回相談に来院する方は、当事者の方、家族の方、当事者、家族ともにみえる方とさまざまです。家族の方には、電話予約の時点で、当方は相談にみえる方がクライエントであることを説明し、了解された上で予約を入れています。
初回相談、診察では、今現在、困っていることを明確化することから始め、現在の問題に至るまでの経過、それに付随する家族関係や生育歴など全般的なことを大まかにクライエントから聞き、何が問題となっているのか、どのような治療援助がクリニックとしてできるのかを、次回の診察の際にこちらより伝え、クライエントと検討していきたいことを伝えます。ケースによっては、薬物療法等を初診から開始する場合もありますし、その時点での緊急な介入が必要と判断したときには、他機関と連絡をとったり、他機関に紹介することもあります。
治療援助のプロセスにおいては、チームとしてクリニック全体で、アセスメント、および処遇方針を検討・確認すること、その方針をクライエントとの間で共有した上で今後の治療プログラムの契約をしていきます。
次に、クリニックの治療プログラムの概要を説明します。治療プログラムには医師による外来診察、ソーシャルワーカー、臨床心理士によるカウンセリング、デイケア、外来通院の方とデイケア利用者が共通に利用できる共通プログラム(教育プログラム、気功等)、家族ミーティングがあります。
デイケアは、アルコール依存症の方を中心に嗜癖全般を対象にしたアルコールデイケア、人格障害や気分障害の方で対人関係障害のある方を対象にしたヤングデイケア、プログラムに参加する準備としてクリニックを居場所として利用するフリースペースデイケアという3つのグループに分けられています。アルコールデイケアは日中デイケアに参加することで、飲酒を始めとする嗜癖行動に陥ることを防ぎ、嗜癖の必要のない自分を体験的に見つけていくことを目的としています。個人の状況に合わせて、3つのグループを柔軟に連動させながら利用していきます。例えば、アルコール依存症の方でも、対人関係、家族関係の中で自分自身を喪失してしまい、どう生きていっていいのかわからないという生きづらさがアルコールを必要としている場合は、ヤングデイケアのプログラムも組み合わせながらアルコールデイケアを使ったりする場合もあります。
共通プログラムには、嗜癖全般を対象とした心理教育プログラム、アルコール問題を対象とした心理教育プログラム、自己の身体感覚に関心を向け心身のリラックスを経験するためのプログラムである気功、アロマ、創造を楽しむなど感性を養うプログラムであるアート、園芸があります。
家族ミーティングは、夫婦関係、親子関係をテーマに、それぞれの関係を意識的に振り返ることを目的として家族の方を対象にしたミーティングです。
それぞれのプログラムは、処遇方針が共有された上で導入されますが、外来診察、カウンセリングの中で各プログラムの利用を振り返りながら、個々の状況に応じて利用されていくこととなります。

アルコール問題への対応
まず、アルコール問題をもつ当事者の方に対しての対応を説明します。先に述べた対象別に分けた1と2の方に対しては、外来診察と並行してアルコール問題を対象にした心理教育プログラムを提供し、アルコール依存症についての知識を得たり、他のアルコール依存症者の話を聞く中で、自らの問題と照らし合わす機会をもちながら治療を進めていきます。問題の複雑さによっては、カウンセリングを導入することもあります。3、4の方に対しては、アルコールデイケアを導入していきます。デイケア導入に際しては、デイケア参加の目的を確認した上でプログラムの契約をします。デイケア参加者には主治医の他に個別担当者がつきます。個別担当者の役割は、プログラム参加状況の把握と医師へのフィードバック、関係機関との連携、問題の整理と解決方法を一緒に検討すること、等があげられます。デイケア参加の頻度やどの時点でデイケアを卒業するかは個別性があります。
家族の方に対しての対応は、家族が自分の対応に悩みながら、アルコール依存症者との共依存関係に気づき、先取り不安や焦り、恐怖感に支配されずに依存症者との境界線を明確にしていけることが、援助の方向性となります。そのために、個々の状況に合わせて、外来診察、カウンセリングを行いながら、心理教育プログラムを使い、その上で夫婦・親子関係を振り返るためのプログラムである家族ミーティングや共通プログラムを利用したりする場合もあります。
専門医療機関におけるアルコール問題への対応は、アルコール・リハビリテーション・プログラムのように治療プログラムのスタイルが確立しているからこそ、逆に治療の個別化が損なわれる危険性をはらんでいます。当事者、家族に対し、個別のアセスメントをたてた上での治療援助プログラムの展開には、医療機関の人材不足、つまりマンパワーの問題もあります。今回、外来専門医療機関の話ではありますが、個人的な経験からは、期間や機能が定まった入院医療と比べ、外来の方がより個別的に開われるという感触をもっています。しかし、当然の話ではありますが、これらも、専門外来医療機関単独で行われることではなく、関係機関、自助グループ等、地域との連携の中で可能になっていくものであると思います。

福祉事務所でのアルコール相談

福祉事務所とはどのような相談機関か
福祉事務所は全国で1200ケ所設置されています。社会福祉法で都道府県、市、東京23区には必ず設置されなくてはならないと規定されており、町村での設置は任意とされています(都道府県341ケ所、市・区八55ケ所、町村4ケ所)。福祉事務所が町村にないときは管轄の都道府県の福祉事務所が担当します。
福祉事務所が設置された当初は福祉六法(生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法、精神薄弱者福祉法(現在は知的障害者福祉法)、老人福祉法、母子福祉法)を担う組織とされていました。その後、福祉関係の法律が改正されたり、介護保険制度ができたり、また自治体の組織改正等により、現在は福祉事務所というと生活保護の実施を中心とする組織を指すことが多くなっています。
しかし、一方で自治体によっては保健所等と統合して「○○保健福祉センター(○○福祉事務所)」とカッコ付きで名乗ったり、介護保険・国民健康保険等の保険や保健・衛生等も含めて、広く「福祉事務所」と名乗った上で各業務は各課ごとに振り分ける「大福祉事務所」もあります。また、生活保護の実施を担う組織を「保護課」「生活福祉課」「福祉課」等さまざまな名称を付けているところもあります。
このように、福祉事務所は都道府県、区市には必ずあるのですが、名称がさまざまになっていたり、組織内で機能が多少異なったりすることもあり、相談に行く場合に何が目的であるかがハッキリしないと、十分な相談ができないこともありますので注意が必要です。生活保護の相談に「福祉事務所」に行くつもりでしたが、「福祉事務所」の保健師とアルコール相談をしただけで終わってしまい、肝心の生活保護の相談ができなかったということにもなりかねません。

福祉事務所は生活保護を実施する現業機関
福祉事務所は自治体によりさまざまな形態となっていますが、「生活保護を実施する組織」という点は全く変わっていません。
生活保護法とは、日本国憲法が国民の権利として「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障したことを受けて、国の義務として国民の生存権を実現するための1つとしてできた法律です。ですから生活保護の目的は、生活に困窮するすべての国民に最低生活を保障し、その自立を支援することが目的とされているのです。
このために福祉事務所は相談を受けるだけの「相談機関」ではなく、具体的な問題解決を図る「現業機関」とされています。この現業機関という呼び方はわかりにくいのですが、①迅速性、②直接性、③技術性の3つを備えた組織(現業機関=福祉事務所)とされています。

福祉事務所が備えていなくてはならない3つの特色

①迅速性とは、生活が困窮したりして訴えがあれば迅速に解決(生活保護を適用して生活保護費の支給や入院等)を図らなくてはいけない、ということです。
②直接性とは、解決策を他の組織に指示したり、企画するだけの事務処理(お役所仕事)ではなく、直接現場(家庭訪問等)に行き解決しなくてはいけない、ということです。
③技術性とは、生活の困窮とは単にお金がないだけの場合もありますが、さまざまな要因が積み重なって生じたことも多いことから、「お役所の常識」や「井戸端会議的判断」ではなく、ソーシャルワーク等の技術により解決を図る必要がある、ということです。このように福祉事務所は国民が生活に困ったときに、ただ相談にのるだけでなく、現業機関として生活保護を適用し問題解決を図るという組織なのです。

生活保護制度とは
生活保護の目的は国民の生存権の保障ということですが、「誰でも」「生活に困った」ら、生活保護が受けられるのでしょうか。
生活保護制度の基本原理として、生活保護法は次の4つの原理を定めています。
①国家責任による最低生活保障(第一条)
②無差別平等の原理(第2条)
③健康で文化的な最低生活を保障する原理(第3条)
④保護の補足性の原理(第4条)
の4つです。
それぞれについて説明しましょう。
①国家責任による最低生活保障は生活保護法の目的で既に述べました。
②旧生活保護法は「怠け者」は保護しませんでした。しかし、現行法は無差別平等の原理に基づき、法の要件があるかぎり過去の「浪費」や「怠惰な生活」等を問題とせず保護受給ができるとしました。
③健康で文化的な最低生活を保障する原理とは、生活保護で保障される「最低生活」とは「最低の生活」ということではなく、これ以下の生活水準があってはならない、というものです。
④補足性の原理とは、生活保護を受給するにあたっては資産や能力を活用しても生活できないときに適用する、というものです。
預貯金や株式等の他に、売却可能な財産・不動産や、手続きすれば支給される年金・手当、働く能力があり働き先もある場合等はそれらを活用、利用しても不足のときに生活保護が適用される、ということです。ただ、この資産、能力というのは非常に抽象的で時代ごとに変化しています。
例えば昭和41年には電気冷蔵庫の保有を認めない、つまり資産として売却対象とされた母子家庭の心中事件がありましたが現在は電気冷蔵庫をもっていても問題はありません。同様に平成六年には高齢者のクーラー保有の是非が問題になりました。現在では、自動車や生命保険も保有が認められる場合もあります。また、手続きをすれば年金受給は可能ですが、支給されるまで生活できないとか、働きたいが不況のために(あるいは高齢のために)雇ってもらえない、等という場合もあります。このようにこ
の「補足性の原理」は非常に難しい要素があるので、自分で判断せずきちんと福祉事務所に相談した方がよいでしよう。

生活保護を受給するために
生活保護を受給するためには、福祉事務所に生活保護申請をしなくてはなりません。これを申請主義と言います。入院中などで福祉事務所に行けない場合は、電話で相談してください。申請主義がとられている理由は、生活保護は「お恵み」ではなく国民の権利であり「申請=要求できる」ということなのです。
申請が受理されると、福祉事務所のケースワーカーが事情をうかがったり、生活保護受給の要件について調査したりします。その結果、国の定めた「最低生活基準」と給料や年金等の収入を比較して生活保護の可否が決まります。このときに、生活保護の対象を「同一住居に居住し生計が同一の者」を「同一世帯」とし、世帯ごとに保護することとなっています。これを「世帯単位の原則」と言います。ですから一緒に住んでいる家族のT人だけを生活保護受給させたい、ということはできません。ただし、入院が長期化する等の場合は例外があります。また、配偶者が行方不明とか配偶者の暴力から逃げている、等の場合は「同一世帯」とは言えませんので、配偶者を除いた形での生活保護受給も可能です。
生活保護には次のハつの扶助があります。
①生活扶助、②教育扶助、③住宅扶助、④医療扶助、⑤介護扶助、⑥出産扶助、⑦生業扶助、⑧葬祭扶

生活扶助とは衣食等日常生活の需要をみたすもの、教育扶助は義務教育に伴う経費、住宅扶助は家賃や住宅維持にかかる経費、医療扶助は入院、外来医療費、入院給食費、薬剤費等となっています。
実際の生活保護の受給においては、これらの各扶助の必要性と収入によって支給される扶助の種類と金額が決定されます。ですから、「医療費だけ支給して欲しい」という申請はできません。

福祉事務所とアルコール依存症者の関係

生活保護を受給しているアルコール依存症の方はどのくらいいるのでしょうか。
厚生労働省実施の生活保護受給者全国調査の結果について東京都分の資料では、都内での生活保護受給者13万9710人中アルコール依存症者は2130人(抽出率10分の1)とされていま
す(「第55回被保護者全国一斉調査結果(東京都分)」東京都福祉局生活福祉部保護諜編)。保護者総数からの割合は1・52%ですが、受給者総数の中には赤ちゃん、学童、長期の施設入所、入院者等も含められていますので実際はもっと割合は高くなります。このように生活保護受給者の中でアルコール依存症の割合は決して多くはないのですが(他では精神障害者は15・7%、ひとり親世帯6・2%等)、福祉事務所に来るアルコール依存症者に対して、福祉事務所側は一般に「処遇困難」という認識をもつ場合が多いと言えます。
それは生活保護制度自体が、生活ができなくなってから適用される制度ですので、アルコール問題が複雑化し失職したり、家庭崩壊したり、場合によっては路上生活者になってから、生活保護の場面に登場してくることが多いからではないでしようか。単に経済的に困窮しているだけではなく、精神病院の入院を繰り返したり、アルコール問題で人間関係を破綻させ、信用を失ったり、人を願すことを何とも思わなくなったりしている状態さえ少なくありません。また、回復するために生活保護を受給しているのか、生活保護を受給するために飲酒しているのかわからなくなってしまっていることもあります。
これが病気である、と言えばその通りですが、ほとんどの福祉事務所ではケースワーカーは専門職ではなく、市(区)役所の他課(税務課、土木課、戸籍課、図書館等)から事務職員が辞令一枚で配属され、十分な研修もないままケースワーカーになっています。しかも、経験年数が一年未満のケースワーカーは全国で23%にもなります(「生活保護担当ケースワーカー全国研修会資料」厚生労働省援護局保護課)。福祉事務所職員万人ひとりは一生懸命にアルコール問題について援助したいと思っていて
も、福祉事務所自体がこのような実態のため、アルコール依存症についても正しい知識や対応ができなかったりする場合もあります。その意味では、福祉事業所ケースワーカーに「指導」してもらう、ということではなく医療機関、保健所スタッフと共に回復に向けて上手に生活保護を「利用」する、という姿勢も大事ではないでしようか。

回復手段として上手に生活保護の利用を
入院費が支払えない、失業して生活費がなくなった、医師から仕事はまだしないよう言われたが生活できない、等のときは生活保護の利用を考えてみましょう。
まず福祉事務所に相談に行くことです。T人が心細ければ病院のケースワーカーに相談してみてください。生活保護が適用になれば、これらの直接の生活費や医療費だけでなく、AAや断酒会に参加するための交通費が生活移送費として支給されますし、病院やクリニックヘの通院費やデイケア参加の交通費も医療移送費として支給されます。また、ラウンドアップ等の宿泊研修会についても回数の制限はあるものの交通費、宿泊費等が支給されます。
自省館等の入所施設(生活保護法上の施設と位置づけられています)についても、生活保護を利用して入所することができます。この場合の施設費、食費等は生活保護費で賄えますし、体調が悪くなれば医療扶助で病院にかかれます。

自省館(救世軍自省館)は、アルコール依存症の回復のための施設。生活保護法上の施設のため入所対象者生活保護受給者が原則。入所手続は福祉事務所が行う。
医師から仕事の許可が出たら可能な限り働いてください。仕事をしたからといってすぐに生活保護が打ち切りになることはありません。あくまでも、生活保護基準と収入額との比較になります。生活保護基準自体は個人の年齢や家族構成ごとにより異なるため、一概に言えませんが、アパート暮らしの独り者でも都内で手取り10万円程度では生活保護が廃止になることはないでしょう。
生活保護を受給して飲酒しないだけでは回復とは言えないのではないでしょうか。なぜ生活保護を(受けるのか)受けているのかを考えてみましょう。無理したり、焦ったりせずに(あるいは無理したり、焦らないために)生活保護を回復の手段として上手に利用してください。

民間相談機関におけるアルコール相談

遠藤嗜癖問題相談室(以下相談室)は、民間の相談機関です。本稿では、当室の現況を紹介し、民間相談機関におけるアルコール相談の特徴について述べます。
カウンセリングの流れとプログラム相談室のカウンセリングの流れは、下の図に示す通りです。

カウンセリングの流れ

カウンセリングの流れ

 

面接は、すべて有料の予約制です。来談者の自主性を尊重して、相談を希望されている方から直接電話でインテーク面接(初回面接)の予約を入れていただきます。インテーク面接での情報をもとにカンファレンスを行い、アセスメントし、治療方針を立てます。その際、担当カウンセラーを決定します。
担当カウンセラーとのオリエンテーション面接で、クライエントにアセスメントが受け入れられ、共有されて初めて治療契約が結ばれます。そして、個別カウンセリング、グループカウンセリング、教育プログラムを3本の柱にしてクライエントの認知の変容と行動の修正を目標にしたカウンセリングが展開されます。カウンセリングの中で獲得した新しい生き方の実践の場として自助グループや市民運動の場を活用されていく場合も多いです。
グループカウンセリングは、クライエントの抱えている問題に応じて参加ができるように配慮されています(表5)。教育プログラムは、一3項目にわたる講義で、クライエントのニーズに合わせて選択できるシステムとなっています(表6)。また、家族療法や職場環境に対するコンサルテーション、ネットワークセラピーを実施する場合もあります。

グループカウンセリングと教育プログラム

グループカウンセリングと教育プログラム

相談者の動向
クライアントの「続柄」では来談者は、「本人」が45%と最も多く、「妻」は16%と少ないのが特徴です。これまでの嗜癖問題の相談では、アルコール依存症の場合「妻」が一般的でしたが、近年、共依存の概念が広まり、アルコール依存症の妻たちが共依存症者「本人」として来室する傾向がみられます。「主訴」は、家族関係問題
が群を抜いています。次いで、生活の仕方、対人関係問題と続き、食事の問題、酒の問題、思春期問題となっています。アルコールや薬物などの具体的な物質乱用は意外に少ないことがわかります。アルコール依存症者本人でみれぱ、アルコール依存症としての診断に至らない内科レベルのケース、否認が強く医療機関の受診に抵抗があるケース、アルコール依存と薬物依存や摂食障害を合併したケース、社会生活や集団生活の体験が乏しく既存のグループ療法に馴染めない若年ケース、女性のアルコール依存症者がみられます。「紹介経路」では、精神病院や公的援助機関等、他機関からの紹介が全体の4八%を占めています。
また、相談室のクライエントの紹介が23%を占めており、すでに来室している家族からの介入(インターベンション)の結果による来室が多いことも嗜癖問題相談機関の特徴です。
以上のことから相談室は、まず家族のための相談・治療が期待されています。公的機関の相談を経て来室した共依存症者は、自分自身に何らかの問題を感じ、その問題解決に向けたカウンセリングを希望しています。そこで個人カウンセリングとグループカウンセリングを実施しながら依存症者との関係性と自己の対人関係に目を向け自己変容を目指します。また、動機づけがない依存症者本人を治療の場に導入するための初期介入ケースでは、徹底した課題中心の面接になります。次に飲酒問題はあるがアルコール依存症の診断に至らないケースの家族相談では、医療の枠組みに縛られず、より自由で柔軟に問題を取り扱うことができる民間相談機関への期待が大きいものと思われます。さらに、家族関係の悩みを主訴としてくるケースにはアダルト・チルドレンが多く含まれています。不安や対人関係の悩みとして医療機関や公的機関を訪れ、そこでアダルト・チルドレンであることを指摘されて紹介されたケースやマスメディアや自助グループを通してきたアダルト・チルドレン問題のケースには、アルコール依存症の家族病理に精通したカウンセリングが求められます。
次に、本人の相談・治療としては、いくつかの嗜癖問題行動が合併していたり家族関係病理が深いケースがあります。このようなケースの場合、既存の治療プログラムでは自分の異質性に目が向きやすいばかりか、集団の治療的雰囲気を阻害しやすく治療にのりにくい傾向があります。より個別性に焦点を当てた治療が望まれると同時に、多彩な嗜癖や問題に対応する治療グループが用意されていて、それらを重複して参加できるシステムが求められます。若年ケースや女性の場合は、既存の治療グループの中では浮き上がった存在になりやすく、本人自身も不全感を感じやすいということがあります。これらのケースの多くが相談室に紹介されるため、より一層グループが活性化し共感性と凝集性が生まれ治療効果が上がります。
また、内科レベルの否認の強いケースでは、専門の医療機関より民間相談機関は敷居が低く、治療への抵抗が少なく、教育プログラムや個人カウンセリングによる心理教育的アプローチが効果的と言えるでしょう。このように、より個人的で集中的なサービスを期待して来室するケースが増えてきていると言えます。
最後に、狭義のアルコール依存症の治療では本人の断酒が達成した後に、家族関係そのものを対象とした家族療法を行うところは意外に少ないようです。したがって相談室には、何らかの家族関係の調整や家族関係の葛藤や不全感を取り扱った夫婦セッションや家族セッションを希望してくるケースが多くなっています。これは、嗜癖問題が家族病理であることを明確にしていると同時に、有料で自由契約制の民間相談機関に対する期待が大きいものと考えられます。

相談室におけるアルコール相談の特徴

(1)対等性と専門性
アルコール相談に限らず、嗜癖治療で大切なことは、本人の潜在的な健康性と回復力を見い出し、それを育てることにあると言えます。カウンセラーは「治してあげることはできないが、回復のためのお手伝いはできる」と伝えます。どういう生き方を選択するかは本人の決定に委ねます。カウンセラーには治す力はないし、治してあげることもできません。嗜癖者が他者依存から脱却し、自分の人生の責任を引き受けようとしたときから、クライエントと治療者は対等な契約関係を結ぶことができ、共同作業のパートナーとなることできます。この治療関係は、あくまでクライエントの主体性と動機づけによって維持されることが重要になってきます。このように、クライエントと治療者の対等性を基盤に置きながら、さらにクライエントの自己変容に対する欲求と動機づけを維持するような専門的なカウンセリングの技法が要求されます。例えば、必ず共有されたアセスメントに基づく治療プロセスであること、クライエントにとって納得のできる具体的で現実的な示唆や課題を提示すること、言語的・非言語的コミュニケーションによる面接技術の駆使、専門的初期介入技法の実践、心理教育による自己理解の促進、無力の受容と課題達成による自己の問題解決能力への信頼感の強化、気づきや行動変容の喜びの共有などさまざまなカウンセリングの技術により回復の目標に向かって希望をつなぎます。

(2)個別性と継続性
クライエントの多くが生活の仕方の改善を望んで来室しています。すべての嗜癖問題がそうですが、アルコール依存症の回復には、当面の断酒継続という課題に留まらず、その人の生き方の変容を目標としたカウンセリングが必要です。アルコール依存症本人であれ、共依存の家族であれ、嗜癖として共通の根本にある自己破壊的な生き方の習慣を自覚し、それを変えていかなければ回復とは言えません。そのためには、しらふで生きるという一般的な回復モデルだけではなく、個々のクライエントの実生活に沿った回復モデルのイメージをもつことができるようになることが大切です。
現在の飲酒とその背景にあるもの、嗜癖者特有の自己像の歪みとそれに伴う認知の歪みの修正、自己の感情や欲求と触れあうこと、現実的な課題への対処、ストレスに対する耐容力、徹底した個別化の作業が必要です。民間相談機関では、こういった個別化の作業を可能とします。個別化を促進する有効な手段として、個別カウンセリングが行われることは当然ですが、その他にも系統的な内容の教育プログラムや自分を写し出す鏡としてのグループカウンセリングがあります。これらのさまざまな場面でカウンセリングという治療関係を通して、適切な距離を保ちながら継続的な人間関係を体験し直します。
また、絶望感、被害感、罪悪感、怒り等を根深く抱えたクライエントの人間不信は相当なものです。これらに対しても個人に焦点をあてた継続したカウンセリングが必要となります。10年間の相談者のカウンセリング効果を示す「転帰」では、目標がほぽ達成されたとクライエントと合意が得られプログラム利用とカウンセリングの終了を確認した「終結ケース」が40%と最も多く、次いで、クライエントが認知や行動パターンを変容させている途上にあり、各種プログラムを活用して効果が見られている状態にある「継続中」ケースは20%でした。継続ケースの中には、いったん終結して新たな問題で再登場したケースや相談室の間室から10年間継続しているケースもあり、必要によってはまさに、人生に寄り添うような長期にわたるカウンセリング関係が続いているのも大きな特徴の一つでしょう。また、アセスメントの合意が得られない場合は、「オープンエンド」(21%)という形をとり、クライエントがいったん離れて再考した後に、再開する機会をもちやすくする配慮がなされています。

(3)チームワーク
前述したように、相談室では、個別カウンセリング、家族療法、教育プログラムといった多様なプログラムが活用されています。したがって、1人のクライエントに対して複数のスタッフが関わることになります。他にも危機状況での介入、受付での応対等、相談室全体がクライエントを支えるという体制をとっています。また、一つの家族で複数の家族メンバーが来室しているケースでは、担当者を分けることで秘密の保持を容易にすると同時に、家族メンバー間のバウンダリーを形成します。逆に家族内での情報を共有したり、本人(IP)への直面化(コンフロンテーション)を行うときには必ず家族や関係者から守秘義務の解除を受けます。
嗜癖者は、根底に対人関係における愛着欲求とその充足にまつわる「人間嗜癖」の問題を抱えています。
この人間関係の病理性は、身近で親密な家族関係に反映されやすく、周囲を巻き込んでいきます。チームで関わることは、治療者自身が家族病理に巻き込まれることを防ぐための有効な手段でもあります。

(4)独立性とネットワーク
来室者の半数が他機関からの紹介という現状をみれば、公的機関、医療機関、自助組織、多種多業種とのネットワークが必要不可欠なことは言うまでもありません。しかし、ここで大切なことは、民間相談機関の独立性です。既存の医療からの独立性は、対象を拡大し、アセスメントを柔軟にしています。そのため、医療の枠組みからはみ出した困難なケースや重篤な家族関係に陥っているなどの問題ケースも社会的、法的な保護や規制のない民間相談機関に集まってきているという逆転現象が起きています。有料の自由契約制という、極めて拘束力が弱い民間相談機関は、クライエントの主体性や動機づけによって治療関係が維持されつつ、万万でかなり厳密な限界の共有がなされてクライエントとの適正な距離を保っています。
しかしこのような有効な治療関係を維持していく上で重要な要因は、民間相談機関の経済基盤の安定です。現行の医療保険制度の中に組み込まれないことで、対象と実践の幅を広げている一方で、有料性が一つのハードルになっていることも否定できません。適正な料金設定とクライエントの同意は必須の条件です。経営を安定させるためには、クライエントヘのサービス提供と企業としての社会的責任を踏まえた経営手腕が問われます。
民間相談機関として発展していくためには、社会とクライエントのニーズに応え、質の高いカウンセリングを提供していくことが重要ですし、また、社会的認知を広げていく努力が必要です。相談室では、都や区市の要請による男性、女性相談事業等の業務提携、弁護士や教師、栄養士といった他業種の専門家や企業に対してコンサルテーションも行っています。これらの地道な活動を積み重ねていくことで社会的な存在価値も高まっていくものと考えます。そして、社会的に存在の認知と信頼を獲得していく実践活動を通して他機関と対等な関係が保証され、クライエントの利益も秘密の保持も確保されると思います。民間相談機関では、アディクション・モデルの視点をもつことでアセスメントが柔軟になり、移り変わる社会的問題やクライエントのニーズに対しても迅速な対応が可能になります。それぞれの機関が相補的関係になることがクライエントをネットワークで支えることにつながります。
相談室におけるアルコール相談は、近年特に、家族病理の深い困難なケースが増加しています。しかし、「嗜癖」としてアルコール問題をとらえると、相談・治療に新たな展望が望めます。民間相談機関におけるアルコール相談の特徴は、徹底した個別性と継続性によってその独自性が発揮できるといっても過言で
はないでしょう。そのためには、アセスメントの共有と柔軟な治療方針、治療者の専門性と機動力が鍵となると思います。また、クライエントを取り巻く環境に積極的に働きかけて、ネットワークを作ることも民間相談機関の大切なサービスの1つと言えるでしょう。

 

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