ノックビン(ジスルフィラム錠) アルコール依存症治療薬

アルコール依存症治療薬レグテクトから抗酒剤ノックビン(ジスルフィラム錠)に変更。強制的に酒を飲めない体質にする訳だから、抑止力の差は歴然。

アルコール依存症の治療

      2016/12/10

アルコール依存症の治療

アルコール依存症とは

「アル中」と「アルコール依存症」
みなさんは「アル中」と聞くとどんな人を思い浮かべるでしょうか。酔うと怒鳴りだし、ちゃぶ台をひっくり返して暴れる人とが、酒瓶を引きずり駅のまわりを昼間からうろうろしている人みたいなイメージがありますね。そういった人も確かにアル中なのですが、実はアルコールが原因でさまざまな問題が起こる人は、アルコール依存症の可能性があります。昔は慢性アルコール中毒、略して「アル中」と呼んでいましたが、中毒とは一酸化炭素中毒とか有機水銀中毒(水俣病)などのように、本人が摂取するつもりがないのにその物質が身体に入り障害が起こるものであり、本人が自らの意志で飲んでいるものを中毒と呼ぶことはふさわしくないため、「アルコール依存症」という呼び方に変わりました。アル中と言われたら誰でも気分はよくないでしょう。「自分はそんなにひどくない!」と。しかし実はこの病気はアルコールを飲む人なら誰でもなる可能性があり、それは今まで飲んだアルコールの量と、アルコールの影響を受けやすいかどうかという、その人の体質で大体決まります。一日清酒換算で3、4合を週の半分以上飲むと、大体10年から15年でアルコール依存症になる人が出てくると言われています。個人差(体質の差)はもちろんあって、50年の大酒飲みと言われている人でも単なる大酒飲み、つまりどこも悪くない、何も問題がないという人がいます。一方、飲み始めて数年でなってしまう人もいます。女性の方が影響を受けやすく、中には半年で依存症になってしまった人もいます。

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傷つく臓器
清酒一合(=ビール大瓶一本またはウイスキーダブルー杯)に含まれるアルコールが肝臓で分解されて身体の外に出るまでには3〜5時間かかります。ですから毎晩5合も飲んでいれば翌日までアルコールが身体の中に残り、一年365日アルコールが体内を回り続け、身体のアルコール漬けを作っているようなものなのです。アルコール、およびアルコールが分解されてできるアセトアルデヒドは、実はわれわれの体を作っている組織、細胞にとっては毒です。確かに酒を飲むことで得られるメリットはいろいろあるのですが、身体にとって害の方がはるかに多いのです。強い酒を飲むと喉が焼けたような感じになります。
これは粘膜が強い刺激を受けている証拠です。その延長線上で胃に炎症が起きて胃潰瘍になったり、腸から吸収されたアルコールが全身に回り、各臓器が傷つく可能性があるわけです。その代表が肝臓ですが、肝臓以外にも騨臓をやられて糖尿病になったり、心臓をやられて不整脈が起きたりというように全身の臓器が影響を受けます。たまにしか飲まないのであれば、われわれの体には自然治癒力がありますからそのうち治ります。たとえば転んでどこかを擦りむいたとしても一週間もすればよくなります。ところが毎日飲酒し・ていますと、傷つけたところをまた傷つけて、翌日また傷つけて、というようにずっと身体を傷つけ続けることになるのです。

脳が飲む
アルコールの影響は脳にも及びます。一説にはアルコールの変化した物質が脳にたまっていくとも言われています。10〜15年、それなりの量の飲酒を続けていますと脳の性質が変わってきます。それはアルコールを一口飲むと、脳のスイッチが入ってしまい、脳が「次の酒をよこせ」と命令するため、飲酒が止まらなくなってしまうのです。「今日は二杯までにしておこう」と思って飲み始めるのに潰れるまで飲んでしまう。翌日、「どうして俺はあそこでやめられないんだろう」と落ち込む。本人もそんなにたくさん飲むつもりはないのです。しかしまわりからは「二杯と言っていたくせに、またこんなに飲んで。だらしない、嘘つき、意志薄弱」などと言われ喧嘩になります。花粉症の人が花粉を吸い込んだらくしゃみ、鼻水が止まらないように、アレルギーのような反応がアルコールと脳の間で起こるのです。くしゃみをしている人に「うるさいからやめて!」と口をふさぐなど無理なことです。アルコール依存症の人は、体の反応として飲み続けるので、途中でやめるのは不可能なのです。だらしないから飲むのではありません。
脳の(=身体の)問題なのです。
アルコールは脳の神経を抑制する作用があります。たくさん飲めば最後は寝てしまいますね。アルコール依存症の人がある日急に飲むのをやめるとこの抑制が取れ、脳が一時的に興奮状態になり、手がふるえたり、眠れなくなったり、汗をかいたりするようなことが起こります。(これを離脱症状と呼びます)。またアルコールはうつ病の原因物質でもあり、うつ病を合併する人も少なくありません。酔い方も変わってきます。以前だったら考えられないくらい少ない量で記憶をなくしたり、暴れたり、転んでケガをしたりなど「変な酔い方」をするようになります。これも脳が変化してきている証拠です。

脳の変化は戻らない
この変化した脳は、たとえ何年酒をやめても元に戻りません。「もう一年もやめたんだから正月くらいはいいだろう」と思って飲むと、一ケ月もしないうちに元の浴びるような飲み方に戻ってしまいます。あまりいいたとえではありませんが、交通事故で片足をなくした人が、「オレは両足があるんだ」と歩こうとしたら転ぶのと同じことなのです。しかし足がないのは見えますが、依存症は脳の中のことだから見えません。体質が変わったことをなかなか認めにくいのです。アルコール依存症の方が自分の病気を認めにくい理由の一つはここにあります。

がんより怖いアルコール依存症
アルコール依存症者が飲酒をやめなければならない理由の一つは、この病気の死亡率が非常に高いからです。アルコール依存症者の平均寿命は5二〜53歳と言われており、治療に来られた方の経過を追うと、10年後には4割くらいの人が亡くなっているのです。ではどのような原因で亡くなるのでしようか。死因の第一位は肝硬変で約3割、第二位が心不全で二割弱、第3位は事故死で約一割となっています。事故死の内訳は交通事故や階段からの転落、水死、焼死、凍死などです。この他がんによる死亡が約一割、脳出血、脳梗塞が約一割、孤独、自信喪失、うつ病などから自殺する人も一割近くいます。
治療に通っている依存症者が肝硬変で亡くなることは滅多にありません。というのはさすがに昔のようなひどい飲み方はしなくなるからです。しかし事故はいつ起こってもおかしくありませんし、連続飲酒発作になって一週間も10日も飲み続ければ身体が衰弱し、心不全や脳出血、脳梗塞、消化管出血などの致命的な病気がいつ起こってもおかしくないのです。「飲んでいる依存症者はいつ死んでもおかしくない」というのが私たちの実感です。それだけ死に近い病気なのです。病気の怖さからいったらがん以上でしょう。しかしがんはどんなに手を尽くしても病気が進行してしまうことがありますが、アルコール依存症は酒を一滴も飲まなくなれば天寿をまっとうできるのです。こんな病気があることは学校でも教わりませんから、今までたくさん飲んでしまったのは仕方がありません。しかしこれからは飲み続けて死ぬか、やめ続けて楽しく生きるか、自分で決めることができるのです。

アルコール依存症の診断基準

ではどのような症状があれば、アルコール依存症と判断するのでしょうか。
その目安を示します。

1.精神依存
(飲酒のコントロール障害)
○最も早い兆候
・飲まないと何となく寂しい、物足りない
○次いで現れる兆候
・ついつい多く飲んでしまう
・酔いつぶれるまで飲んでしまう
・大酒飲みと言われたことがある
・飲酒のため周囲に迷惑をかけることがある
○確実な兆候
・医者から飲酒を止められたのに守れない
・昼間から飲んでしまうことがある

2.身体依存
(離脱症状)
○酒を切ったり減らしたりすると、不眠、手のふるえ、発汗、動悸、いらいら、不安感、幻覚、妄想、けいれん、意識消失発作などが現れる
○身体のかゆみ、手足の筋肉がつる、硬直するなどの症状が現れることもある

3.要注意の症状
○飲酒のため前夜のことを思い出せないことがある(ブラックアウト)
○二日酔いで仕事を休んだり、約束を守らないことがある
○ここ数年健康診断で肝障害、糖尿病、高脂血症、高血圧などを指摘されている

誰でも最初からアルコール依存症であったわけではありません。飲酒を重ねるにつれ、脳に変化が起こるわけです。その最初の変化は、酔い方に現れます。飲酒中の記憶がないことをブラックアウトと呼びます。「3軒目から後の店は覚えていない」「どうやって家に帰ったか覚えていない」というような経験はありませんか。誰でもたくさん飲めば起こるのですが、それが早い段階に起こるようになると要注意です。ブラックアウトがあるだけではアルコール依存症と言えませんが、飲み方を考え直すいいチャンスなのです。
飲まないと何となく寂しい、物足りない、という症状は、精神依存のもっとも初期の兆候です。毎日晩酌をする、赤提灯に寄って帰るという方はすでに軽い精神依存の状態にあります。日本人の飲酒人口は約6300万人(平成5年)、そのうち毎日飲酒する方はおそらく1000万人以上いるでしょう。さすがに毎日飲むだけでは依存症ではありませんが、ついつい多く飲んでしまうとか、いつも酔いつぶれるまで飲んでしまうとか、大酒飲みと言われたことがある人は、アルコール依存症の可能性が出てきます。確実な兆候は、医者から飲酒を止められたのに守れない、あるいは昼間から飲んでしまうという症状でしょう。医者が禁酒を言い渡すには科学的な根拠があります。それが守れないことは、かなり問題なのです。また夜まで待てず昼間から飲むようになったら確実にアルコール依存症になっています。こういった飲み方のコントロールが効かない状態をコントロール障害と呼んでいます。
離脱症状の出現もアルコール依存症の診断根拠になります。離脱症状は身体依存の兆候で、酒量を減らしたり、飲酒をやめると現れる症状のことです。もっとも早期に現れる離脱症状は不眠です。「飲酒しないと眠れない」という話はよく聞きますが、すでにアルコール依存症になっている可能性があるのです。有名な離脱症状は手のふるえですが、この出現はもう少し後になります。その他、発汗、動悸、いらいら、不安感、抑うつ気分、ひどい場合は幻覚や妄想が出たり、けいれん、意識消失発作などを起こします。
離脱症状はすべてのアルコール依存症者に出るわけではありません。「手がふるえないから俺はアルコール依存症じゃない」という方がいますが、これは勘違いです。精神依存あるいは身体依存の症状のどちらかが認められたらアルコール依存症なのです。

アルコールによって起こる諸問題

ではアルコールによってどのような問題が起こるのか、もう少し詳しく見てみましょう。

1.身体の問題
○脂肪肝、肝線維症、肝硬変、アルコール性肝炎
○急性肺炎、慢性肺炎、糖尿病とその合併症
○胃・十二指腸潰瘍、マロリー・ワイス症候群、食道静脈瘤
○急性心不全、心筋症、不整脈
○脳出血、脳梗塞、ウェルニッケ脳症、ペラグラ脳症、アルコールてんかん
○がん(食道がん、口腔・咽頭がん、S状結腸がん、直腸がん、B・C型肝炎ウイルスによる肝硬変と肝臓がん)
○胎児性アルコール症候群

2.精神の問題

いらいら、自信喪失、抑うつ、対人恐怖、性格変化、不眠、アルコール嫉妬妄想、アルコール幻覚症、アルコール痴呆、自殺、異常酪酢による事故、事件など

3.家庭の問題

○信頼感の喪失、嫉妬、不和、暴力、離婚、経済破綻など
○子どもの問題
虐待、情緒障害、非行、不登校、家庭内暴力、「いい子」の問題など大人になってから感じる生きづらさ(アダルトチルドレンの問題)

4.職場の問題
遅刻、欠勤、怠業、ミス、酒臭、生産性低下、事故、けんかなど

5.社会の問題
事故、火災、けんか、傷害、性犯罪、暴力、殺人など

身体の問題
常習飲酒によってさまざまな臓器障害が起こります。肝障害、譚炎、糖尿病とその合併症、消化管出血、心筋梗塞、脳症、痴呆など、いずれも生命にかかわるか重い生活障害を残します。
アルコールの直接作用を受けやすい口腔、咽頭、食道などの上部消化管や、S状結腸、直腸などでがんの発生率が高くなります。またB型、C型肝炎ウイルスを保持し肝硬変になった人が飲酒を続けると、肝臓がんの発生率が高くなると言われています。さらに女性の場合、妊娠中に飲酒するとその影響は胎児にも及びます。出生児は、知
能障害、発達障害、特徴的な顔面の形成異常を示すことがあり、胎児性アルコール症候群と呼ぱれています。

精神の問題
離脱症状についてはすでに述べましたが、その他にもいくつか特徴的な精神症状が見られます。
(1)振戦譫妄(しんせんせんもう)
離脱症状がひどい場合に意識の混濁と興奮、幻覚、見当識障害などの入り交じった振戦譫妄とい
う状態になることがあります。幻覚では小動物視が有名で、蟻とか、ねずみとかの小さい動物が壁やベッドの上に現れたり、作業譫妄といってその人の職業に馴染み深い動作を繰り返すことがあります。入院が必要になることが多いのですが、家で看護する場合は、夜になると悪化しやすいので、夜間明かりをつけ周囲に人がいて話しかけ
ていると本人の不安が強くなりません。このような状態は数日間続き、やがて深く長い睡眠の後に回復します。

(2)アルコール幻覚症
断酒後、意識障害を伴わない幻覚が現れるものをアルコール幻覚症と言います。幻覚は多くの場合幻聴で、第3者同士が自分の悪口を言ったり殺そうと相談したりなどの被害的な内容です。この症状は数週から数ケ月続くことがあります。

(3)アルコール嫉妬妄想
配偶者など身近な異性に対し妄想的に嫉妬感情を抱く状態をアルコール嫉妬妄想と言います。ぎくしやくする関係に加えアルコールによって性能力が低下したり、被害的になったりするためで、相手を責め暴力を振るったりします。

(4)抑うつ状態(うつ病)
抑うつ状態の合併もよく見られます。既述のようにアルコールの薬理作用で起こる可能性がありますし、元々うつ病の素因があった場合もあります。あるいは仕事を失ったり妻に逃げられたりなどが原因でうつになる場合もあります。心療内科や精神科でうつ病として投薬を受けていることも少なくありませんが、飲酒が続いているのに抗うつ薬を使っても効果は望めず、また断酒するだけで改善する例も多いので、まずアルコール依存症の治療を行う必要があります。なお抑うつ状態に自殺念慮が伴ったり、実際に企図がなされることも珍しくありません。

(5)その他
不眠も断酒後よく訴えられる症状です。離脱期には睡眠導入剤を使用しますが、薬が改良され安全になったと言っても依存性の問題はありますし、またアルコールに依存していた人は他の薬物にも依存しやすいので、やむを得ない場合を除いては早めに中止する方がいいでしよう。対人恐怖をもったアルコール依存症者も多く見られます。これまでは酒でごまかしながらなんとかやり過ごしてきたのですが、断酒すると元々の症状が目立ってくるわけです。数として多いわけではありませんが、アルコール依存症が進行するとアルコール痴呆になることもあります。

家庭の問題
アルコールは本人の身体や精神を蝕むだけではありません。家庭生活を破壊します。アルコール依存症者と生活する家族は、酔った当人の気まぐれな、あてにならない言動や暴力的な振る舞いに振り回され、家庭としてもっとも大切な信頼関係が失われていきます。飲酒する本人とそれを止めようとする家族の間でいさかいが続き、家庭生活は暗く緊張に満ちたものとなります。飲酒者の暴力は配偶者のみならず子どもの虐待にもつながります。配偶者は情緒不安定になり、心身症やうつ病などの問題を抱えることも少なくありません。離婚に至る例も多いのです。また飲酒者に振り回される生活では子どものケアが後回しになります。子どもは孤独を感じ、自分はいなくてもいいのではないかという自己否定的な考えをもつようになり、中には情緒障害や不登校、家庭内暴力、非行などの問題を起こす子どももいます。不健康な家庭にあって健気に頑張る子どももいますが、信頼感のない家庭で育つため大人になって人を信じることができず、対人関係面で生きづらさを感じ、人生の目標が見いだせず、自己不全感をもち続けるアダルトチルドレンの原因にもなるのです。

職場の問題
職場では二日酔による遅刻や欠勤、酔った状態で仕事をするため仕事の生産性が低下し、ミスが目立ち、酒臭をさせて客を怒らせたり、事故、けんかなどを起こして解雇されることも珍しくありません。

社会の問題
飲酒者による悲惨な交通事故の報道は後を絶ちませんし、酔って引き起こされた火事やけんか、傷害事件、電車での痴漢行為などの性犯罪、殺人事件(殺すことも殺されることもある)などさまざまな問題が起こります。

すべてを破壊するアルコール依存症
このようにアルコールは身体や精神を病むだけでなく、家族や社会に対してもさまざまな問題を生じさせます。人がアルコールを飲む理由はさまざまです。みんなでにぎやかに飲んで騒ぐのが楽しい人、酒の味が好きでたまらない人、営業や接待で飲む人、一仕事終わったときの打ち上げが楽しみの人、眠れないから飲む人、酒ぐらいしか楽しみがない人、創作活動には酒が不可欠だという人など十人十色です。しかしどのような理由からであろうと、その人にとってアルコール依存症となる基準の量を超えてしまえばこの病気になってしまいます。そして一度アルコール依存症になってしまったら、かつてのように上手に酒を飲むことはできないのです。性格が悪いから飲むのではありません。根性がないからやめられないのではありません。病気だから飲むのであり、正しいやめ方を知らないから、あるいは正しいやめ方を実行しないからやめられないのです。アルコール依存症者はこの病気であることを知らずに、あるいは受け入れずに大量に飲酒し、身体各臓器に致命的な障害を起こし、酔っぱらいと非難され、家族に逃げられ、仕事をクビになり、精神的にも身体的にも社会的にも破滅に至るのです。

治療の方法とその解説

薬物療法と精神療法

アルコール依存症の治療の目標
アルコール依存症の治療で重要なことは、病気について正しく理解すること、症状を緩和させ精神、身体の回復を図ること、断酒継続の方法について学び実践すること、家族や職場の人間関係の修復を図ること、酒のない新しい生き方を見つけることなどがあげられます。
当面の治療の目標は断酒を継続することです。「あれだけ酒が好きだった人だから断酒はかわいそう、節酒ではいけないのか」という質問を受けることがありますが、節酒していても断酒群に比べれば4倍近くの死亡率であり、以前と同じように飲酒を続けた人となんら差を見いだせません。アルコール依存症となってしまった者にとっては、断酒以外に生き残る手だてはないのです。

退院したアルコール依存症者の依存転帰別の死亡者の割合
断酒していた群 8.0%
節酒していた群29.4%
飲酒していた群 29.6%

初回診察の重要性
初めての方には、まず来院された勇気に敬意を表し、今までの経過と今回の来院に至るきっかけ、および現在困っている問題などを中心に話を聞きます。
緊急に対処する問題がないことを確認した上で、本人や家族の困っていることや症状の特徴を踏まえながら、アルコール依存症という病気の概略と、どのような治療が必要かについて説明します。多くの人がこの病気の説明を聞くのは初めてで、最初は不安だった本人や家族も病気の特徴を知り、解決できる問題であることがわかると少し安心します。そしてほとんどの方は治療が必要なことに納得されます。何よりも重要なことは、本人も家族も解決への希望がもてるようになることなのです。
何度か専門治療を受けたことがある人に対しては、今までと同じやり方をしたらまた同じことが起こるということを伝え、「どうやったら今までと違ったやり方ができるだろうか」ということを一緒に考えます。
治療に対し消極的または拒否的な人に対しては、じっくり話を聞きながらその理由を探ります。本当はまったく問題を感じていない人などいないのです。しかし事実を受け入れてしまうことの怖さや体面、周囲への反発などからこの病気のことを認めることができません。最初は断酒する気持ちになれなくても、ともかく自分の飲酒の問題を冷静に考える時間、場がもてるようになってくれればいいのです。集団精神療法(ミーティング)に参加し始めれば、治療は半ば成功したものと考えています。ミーティングは医療機関で行われるものでもAAや断酒会などの自助グループでもかまいません。

離脱期の治療
アルコール依存症の治療は断酒することで起こる離脱症状の治療、合併する身体疾患の治療、検査から始まります。全身状態によっては外来でも1、2週間点滴を行って水分補給、栄養障害の改善を図ります。
肝庇護剤やビタミン剤の処方に加え、離脱症状の軽減のために緩和精神安定剤(マイナートランキライザー)や睡眠導入剤を短期間処方し、安静を保ち消化のよいものを食べ、よく眠るように指導します。またけいれん発作の既往のある人に対しては抗けいれん剤を、うつ状態が強い場合は抗うつ剤を投与します。
これらの精神症状、身体症状の治療や検査と並行して、外来の場合はできるだけ毎日ミーティングに参加してもらうのが基本的なプログラムになります。なお下記のような場合には入院治療が必要です。

入院治療が必要な場合
・衰弱して全身状態が悪い
・肝障害をはじめとする各種臓器障害の程度がよくない
・断酒意思はあっても飲酒欲求が強く家では酒が切れない
・振戦譫妄、幻覚、妄想など精神症状が強い

入院の場合は状態が安定してから断酒プログラムに導入します。

抗酒剤(ノックビン・ジスルフィラム錠)の服用

エチルアルコールはその分解の過程でアセトアルデヒド、酢酸と変化していきますが、アルデヒド説水素酵素の働きを阻害しアセトアルデヒド濃度を上昇させ、悪心、嘔吐、動悸、顔脈、顔面紅潮など人工的に悪酔いの状態を作り出す薬が抗酒剤です。この薬は酒が嫌いになるわけではなく、この薬を飲んだことで酒を飲まないように自制するためのものです。「朝、あの薬を飲んだから酒を飲むとやばいぞ」と諦めることができるのです。現在日本ではシアナマイド(液体)とノックビン(粉末)のニ種類が使われています。毎朝起床時に服用するよう習贋づけるのがいいでしょう。服用は一年くらいを目安とします。

アカンプロル(レグテクトジェネリック)

アカンプロル(レグテクトジェネリック)

アカンプロルは断酒補助剤のレグテクトのジェネリック医薬品です。インドのSun Pharmaが製造・販売しており、個人輸入で入手することができます。

この薬の有効成分アカンプロサートカルシウムが脳に作用し、アルコール依存で高まっている神経活動を抑制することで「飲みたい」という飲酒欲求をおさえます。

ノックビンジェネリック(CHRONOL)

ノックビンジェネリック(CHRONOL)

 

ノックビンジェネリック(CHRONOL)の主成分は ジスルフィラム(Disulfiram)で、

服用するだけで、ごく少量のアルコールでさえも受け付けない体にします! 強制的にアルコールを受け付けなくするので、効果てきめんです。ノックビンを飲んだら、もう断酒成功です。

製造元:CHAROON BHESAJ LTD.  タイ製、タイ発送です。個人輸入代行サイトで購入可能です。

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教育とミーティング
離脱症状の治療に引き続いてアルコール依存症の教育とミーティングが行われます。講義やビデオ学習などでこの病気に対する理解を深めることはもちろんですが、ミーティングに参加することが非常に重要です。ミーティングの重要さは実際に体験しないとなかなかわかりづらいのですが、ミーティングに出てみると、苦しんできたのは自分だけではなかったと知ってまずホッとします。また酒飲みの気持ちは酒飲みにしかわからないということがあるようで、仲間ができた気分になり、この人たちと一緒にやめていってみようかという気になります。さらにすでに断酒している人の発言からは、上手なやめ方のコツを知ることもできます。また自分より重症な人の存在は、「ひどくなったらあんなふうになるんだな。やめてよかった」と反面教師にもなるわけです。
そして、これらの治療の進み具合を医師の診察で確認し、適宜助言を行い、必要に応じて家族や上司と面接したり、個別のカウンセリングを設定したりなど、プログラムを調整していきます。
定期的に通院し診察を受けること、抗酒剤を服用すること、ミーティングヘ参加することの3つを断酒治療の3本柱と呼んでいます。通常少なくともニケ月は集中的に、できれば毎日ミーティングに参加し、その後もしぱらくは通院を続けミーティングに参加するよう指導しています。われわれの経験上この3つを守るのが一番楽で確実なやめ方で、一つでも欠くと失敗する危険が高いのです。

アルコール依存症の治療予後
アルコール依存症の専門治療を受けた人は、その後どういう経過をたどるのでしょうか。入院治療を受けた患者の経過についてはいくつか研究報告がなされていますが、それらによると退院3ケ月以内で半分以上が再飲酒し、断酒継統率は2年後に20%で、その後は横ぱいになるということでほぽ共通しています。
外来クリニックの成果については1999年に慈友クリニックの野口氏を中心に調査を行いました。

断酒に要した期間

断酒に要した期間

慈友クリニックの夜間ミーティングに1994年に参加した128名を5年後に追跡調査したものですが(回答者5二名)、結果は初診時から断酒を始めた人が36・5%、初診から一年以内に断酒した人が9・6%、二年以内に断酒した人が7・7%、3年以内に断酒した人が5・8%となっています。つまりこれらの合計59・6%の人が調査時点で二年以上断酒が続いた人ということになります。断酒率6割という数字は、退院後二年で二割という報告に比べきわめて高いことになりますが、それにも増して注目していただきたいのは、最初から断酒した人は4割弱で、その後通院する中で断酒していった人が二割以上いたという事実です。いかに治療を続けることが重要かがわかります。
アルコール依存症は回復できる病気です。あきらめないで治療することがなにより大事なのです。

入院治療-専門病棟での治療

近年アルコール依存症の治療の進展は著しくなっています。1980年頃までは、治らない病とされ「隔離して断酒」
以外に方策はありませんでした。1970年頃から、ミーティングを柱とする治療法が盛んになるとともに、自助グループ(断酒会、AA)も各地で活発な活動をするようになりました。次第にアルコール依存症は「回復できる病気」としての認識も高まり、多くの精神科病院でアルコール依存症者の受け入れと、治療プログラムを取り入れるようになってきました。また治療環境に関しても、専門病院、専門病棟が全国で65施設を数えるほどになっています。同時にクリニックの数も近年になり急速に増加し、治療主体は入院治療から、外来における通院治療と変わりつつあります。治療内容の多様化も見られるようになり、このような流れの背景として
①軽症アルコール依存症者の増加
②身体合併症をもつ患者の増加
③アルコール依存症患者の高齢化
等があげられます。

アルコール専門病棟
アルコール専門病棟では、原則として任意入院形式で、開放病棟であることが望ましいと思われます。開放病棟であるということは、飲酒の機会が常にあるということですが、そのことがかえって患者自身の酒に対する自律心を養い、断酒の意志を引き締めることになっているようです。大切なことは患者と治療者の信頼関係であり、信頼関係を成り立たせるためには、スタッフだけでなく、患者自身にも責任ある行動が求められるようになってきます。
アルコール病棟では次の点に留意が必要です。
①アルコール関連身体疾患に対応できる
アルコール依存症は体力の限界まで飲み続ける人が多く、長年の飲酒の結果、さまざまな臓器、器官に害を及ぼしています。また、重度の離脱症状を起こす人に対し、適切な治療や処置を施さない場合、思わぬ事故が起きたり、最悪急死する可能性もあるため、早期に専門治療を必要とします。
②専門治療プログラムが準備されている
医療機関によって内容や期間に差はありますが、断酒への動機づけとして、依存症に関する学習や、酒なし生活習慣を取り戻すためのさまざまな試みが実施されます。

アルコール専門病棟の治療プログラム

アルコール専門病棟の治療プログラム

③入院中に地域の自助グループと交流できる場があり、退院後の断酒生活に備える援助の場がある断酒継続していくためには自助グループヘの参加が大切ですが、退院後の参加率は20%程度に留まっているのが現状です。そのため、入院中から治療プログラムの一環として、自助グループを体験学習し、自分に合うグループを探すことが大切だと考えています。
④家族のための集団療法、治療プログラムがあり、酒害者家族の相談・治療・入院にも対応できるアルコール依存症は本人の体だけでなく、家族や仕事、社会問題まで発展していきます。そのために生じる夫婦関係の崩壊、家族・央婦間暴力(DV‥ドメスティック・バイオレンス)、機能不全、子どもへの影響は大きく家族の心のケアも必要になってきます。それと同時に家族も依存症者への対応についての正しいあり方を学ぶことが必要とされ、家族教育や家族会に参加することが大事とされます。

患者自治会
アルコール治療プログラムを実施していく上で、自治会は非常に重要であり、集団療法を通し、治療共同体として、互いの目的のために意思の疎通を計ることが大切です。開放病棟で治療することと切り離せないのが、患者自治会であろうと思います。患者自治会は、アルコール依存症からの回復を目指す患者集団としての凝集性を強め、日課を消化していく中心に自治会があり、病棟全体を治療的雰囲気にまとめあげます。また入院中の患者が、目的意識をもって療養していく過程で、大切な橋渡し的な役割をにない、治療効果も上がってくると思われます。

治療システム
アルコール専門病棟では、短期離脱入院、断酒継続によるストレス対応のための休養入院、断酒目的の教育入院等々、患者のニーズに合わせた治療システムの用意が必要と思われます。
第一期治療は1カ月までとし、入院初期治療の対応は、臓器障害に対する内科的対応と離脱症状の出現に対しての経過観察が重要です。この時期に主に行う検査は、

入院時に行われる検査
*血液検査(生化学・末血・免疫・血清)
*生理機能検査(心電図・脳波)
*一般検尿・検便
*X線検査(胸部・腹部)
*X線造影検査(食道・胃・十二指腸)
*CT検査(頭部・腹部)
*心理検査

身体の回復を計り、抗酒剤
の投与が開始されます(治療計画書を作成し理解と協力を得る)。アルコール依存症は否認の病気と言われるくらいで、アルコール問題に対する否定、言い訳、合理化、正当化、すり替えなど、自分に酒の問題があるとは思わない、認めない、認めたくない方々が多く、この時期は面接やカウンセリングに重点が置かれます。
第二期治療に入ると、患者の離脱症状によるイライラ感もなくなり、アルコール依存症としての受け入れができるようになってきます。この頃から集団療法への取り組みを開始し、各種プログラムヘの参加や試験外泊等が行われ、これまでに損なってきた家族関係・人間関係の修復を行っていきます。この時期に一番注意が必要なのは「ためし行為」です。体力も回復し、自信のようなものが出て少しくらいならと飲酒に走ることがあります。
後期に入ってくると、社会復帰の基盤作りとして、地域自助グループヘの参加を勧めていきます。自助グループ参加には、さまざまな問題をしらふで乗り越え、健康的な生活を送っている人たちを、自分の目で見て、身体で感じることができるという利点があります。

治療プログラム
治療プログラムは、アルコールおよびアルコール関連問題についての正しい知識を学習し、飲酒に対して自己の置かれている状況を理解し、アルコールに対する正しい対応を考えていただくことを目標にしています。専門病棟で多く取り入れられている治療プログラムとしては、上の図に示すように多様であり、治療効果も上がっています。アルコール依存症者が、社会復帰し断酒継続していくためには、以上のプログラムを消化することも大切ですが、加えて断酒3原則と言われる、抗酒剤の服用・通院治療・地域自助グループヘの参加が断酒継続への大きな助けとなっていきます。同時に、せっかく自分がアルコール依存症であることを認め、専門治療を受け断酒を始めても、職場復帰等これまでの人間関係の中に戻ると、再飲酒の危険が増大してきます。
そのため地域の断酒会で、断酒宣言し、周囲の人に酒を飲めなくなった理由を話し、理解を得ることが大切だと言われています。どれか一つでもおろそかにすると、それだけで再飲酒の可能性は高まります。

通院治療-クリニックでの治療

アルコール依存症のクリニックでの専門治療は198一年に大阪の「小杉クリニック」により始められ、東京では1885年「周愛クリニック」が開院しました。90年代以降、都市部を中心にアルコール依存症の専門治療が受けられるクリニックが増えました。
クリニックの治療のメリットとしては、①「休職せずに治療が受けられる」「家庭を離れずに治療が受けられる」というように今までの生活スタイルを変えないで治療ができること、②入院に比べると通院は生活の一部であり、アルコール依存症者本人が医療に依存せずに自分の問題としてとらえやすいこと、③自分の足で通院するので、規則正しい生活が作れることです。もちろん、高齢の場合や身体症状や精神症状がひどい場合は、入院を必要とするケースはありますが、入院せずに通院し回復をしている人が数多くいます。

クリニックでの治療の流れ

クリニックでの治療の流れ

 

初診(予約一インテーク・診察)
慈友クリニックでは、初診は予約制になっています。当然ですが初めての患者には、病状、生活環境、性格、治療動機が異なりそれぞれに合わせた関わりが必要です。まず、始めにインテーク(予診)が、クリニックのスタッフにより行われます。そこでは、生育暦や家族構成、飲酒の問題、断酒意欲等を聞き、治療プログラムのオリエンテーションも含めた面接を行います。患者の中には、断酒意欲のある人ばかりでなく家族や生活保護の担当者から無理に連れてこられた人、上手に飲めるように治療してほしいと思い受診する人などさまざまです。スタッフは、それぞれの個々の話に耳を傾け、共感しつつアルコール依存症を説明します。始めは、アルコールをやめるかどうか迷っていた患者や「自分はいつでも酒をやめられる」「この間はちょっと飲みすぎただけ」等と否認をしていても、「やはり自分が断酒しないと駄目ですね」
「本当は酒をやめようとしたけれどやめられなかった」と初診時の段階で問題を認め治療につながる人が多くいます。もちろん、否認をし続け怒って一度だけの受診になってしまう人も、小数ですがいるのは事実です。
クリニック側では、どのような形態で通院をするかの提案はしますが、決定は患者自身が行います。スタッフは、患者のライフスタイルに合ったクリニックの利用法を
本人や家族と話し合い提案をします。例えば、仕事をもっている人には、夜間ミーティングの参加の提案を行い、仕事の都合で平日に来院できなければ、土曜日のミーティング参加と診察を提案し、近くの自助グループを紹介します。また一日中、時間のある人には、デイケアの参加を提案します。家族の方には家族教育プログラムヘの参加を提案します。しかしながら、私たちの提案にのらない患者もいます。そのときは希望に添いながらアルコール治療の必要性を説き本人の決定に委ねます。
その後は、医師にこれまでの経緯や問題点、スタッフの感じたことなどを伝え診察となります。医師からは、まず、身体症状、精神症状のチェックが行われ、病気の説明、服薬、治療方針等が出され本人との治療契約が結ぱれて、治療が開始されます。

ミーティングとアルコール教育
ミーティングは、自助グループやアルコール救護施設、保健所の酒害相談等でも行われており、アルコール依存症からの回復には重要なウエイトを占めています。ほとんどのアルコール依存症の回復者は、ミーティングに参加をしていた経験があり、「ミーティングに出なければ回復はない」と口をそろえて言います。
クリニックのミーティングに出ている患者に「なぜミーティングが、断酒に効果があるのか」を問うたとき、「朝、ミーティングに出席するので生活のリズムができる」「ミーティングに出ているとほっとする」「自分だけではなかった」「いろいろな人の話の中に断酒のヒントがある」「スタッフが入っているので安
心」などの感想が聞かれました。ミーティングでは、飲んでいる頭で考えるのではなく、しらふの頭で考え自分について話し、他人の話を聞きます。ミーティングでは、人の批判もしないし質問もしないといった安心して自分を語れる場であることが、自分を振り返り、しらふの自分の生き方を捜すことになるのだと思われます。
またアルコール教育の一環として週に一度、講義形式のミーティングが行われます。またアルコール依存症者の家族においては、毎週ミーティング形式のグループワークが行われ、月に一度、スタッフによる講義が開かれています。

アルコールデイケア
現在アルコールデイケアは、週5日間、午前10時から午後4時までの6時間行われています。朝10時からのアルコールミーティングと3時からの日替わりのプログラムには、メンバー全員が参加しています。プログラムの内容は、運営ミーティングで話し合いがもたれ、メンバーによって決定されます。例をあげると「スポーツ」「フリートーク」「教育プログラム」「お菓子作り」「陶芸」等です。また、午後12時30分から午後3時までのプログラムはありますが参加は任意です。参加をしていないメンバーは何らかの形でしらふの時間を過ごしています。デイケアのスタッフは、そのような彼らに添う形で一緒に行動をしています。

患者主体の外来治療
アルコール依存症の治療は、困難だとされてきた時代がありましたが、クリニックのアルコール治療が認められ、都内では、アルコール専門治療を掲げるクリニックも増えました。実際、患者の中には、入退院を繰り返し断酒できなかった人がクリニックの治療を受け回復したケースや、入院を一度もせずにクリニックの治療で回復したケース、サラリーマンが仕事帰りにクリニックのミーティングに参加し回復したケースなど多くの人が回復しています。入院での治療ではなく外来での治療で回復する患者が大勢いるようです。クリニックの外来治療は入院治療と違い、管理が少ないと言えます。外来では一日のうち、デイケアで通院している人で6時間、ミーティングに通院している人でも1、2時間、しかも毎日来院する人ばかりではありません。
アルコール依存症は、自分の問題です。医師やクリニックのスタッフが回復させてくれるわけではありませんし、薬で回復する病気でもありません。そこで、クリニックでは、患者が主体となる医療を目指し、彼ら自身の問題を彼ら自身が考え自己決定し行動していくことを尊重することが重要であると考えています。そのためには、彼らの回復する力を信じて見守る姿勢が大切です。

家族対応の変遷

事実は小説より奇なり
20数年前(1970年代)の家族相談を振り返ると、私は家族の語る壮絶な生活状況になす術もなく「大変だろうな!」と思う半面、「本当にこのようなことがあるのだろうか?」と思ったこともあります。
事実は小説よりも奇なりでした。
そして、「なぜ逃げないのか?」「なぜ離婚しないのか?」「どうしてここまで面倒をみるのか?」など疑問を抱いたりしたものです。そして、本人が回復すれば家族の問題も解決すると考えていました。しかし、本人が回復すると家族が精神的に不安定になるなど、本人の回復と家族の回復が一致しないことがしばしばありました。そこには本人のアルコール問題とともに家族の問題があり、現在では、家族の健康を優先した関わりをするようになりました。

スタッフのイネーブリング
アルコール病棟に勤務した当初、家族の話を聞くと、何か気持ちが重くなったことを思い出します。アルコールを飲んでは暴れる、仕事をしないで飲む、子どもに暴力を振るう、お金を盗むなどなど。私には考えられないことの連続でした。それはアルコール依存症者本人が語る家族の状況とはあまりにも違い、本人と家族のどちらを信用してよいのか迷ったりもしました。本人の話では家族が冷たいから、妻がうるさいから、会社でストレスが溜まるから、などというように飲酒の理由が語られ、それが最ものように思われたものです。我々は本人の看護をしているのであり、患者の味方であるという教育を受けてきています。家族がいくら本人の問題を話しても、それが本人の回復にマイナスと感じると、本人の言い分に荷担したものです。つまり当時の我々が本人に添おうとする対応は、本人に巻き込まれていたものと思われます。
そのため家族にとっては当然、家族の苦しみを理解してもらえないと医療に不信感を抱くか、不承不承、納得し治療者に協力するしかなかったと考えられます。つまり本人が訴える飲酒理由と思える改善を家族に求め、彼らが飲み続けられる環境づくりを行っていたとも考えられます。
例えば、退院時など本人が飲酒できないように抗酒剤を服用させるのは家族の役割のように指導していましたが、それは家族の力で断酒が継続するように指導していたのだと思われます。

アラノンと家族システム論
そのような家族対応はアラノンとの出会いから変わっていくことになりました。アラノンの人が病院の家族会に参加するようになり、家族も自分の問題として自分の生き方を探していこうというものでした。
しかし私はすぐには家族の生き方を探すという考えを受け入れることはできませんでした。家族が自分らしく生きるということは、アルコール依存症者の回復に協力しないことにつながり、彼らはどのようになるのであろうとの疑問からでした。
そのように感じているころ、アルコール依存症者の治療に家族システム論が唱えられるようになり、それはアラノンの考え方に疑問を抱いていた我々を充分に納得させるものでした。つまり、家族が変わればアルコール依存症者も変わらざるを得なくなるというものでした。アルコール依存症者も変わらざるを得なくなるということは、断酒の方向に向かっていかない限り家族から受け入れられないことを意味します。そのようなアラノンの考えと家族システム論は我々に大きな転機を与えました。

家族の回復を求めて
我々は体験の中で、家族も病んでいるということは感じていました。そこで家族システム論を使い家族に関わっていくことになりました。それはアルコール依存症者にこだわらず、家族の健康を優先して関わっていくもので、家族が健康を取り戻すと本人が困り、本人も健康を取り戻そうと行動していきます。ということは、家族が変わると本人も変わらざるを得なくなり、断酒の方向へ向かっていくということでした。そのようになると、家族対応はアルコール依存症者のためだけでなく、家族の病みを伝え家族の回復を考えていくようになり、家族の苦しみを理解し、本人ぱかりにとらわれるのではなく、家族が自分自身のことを考えるような関わりになりました。
当初は家族の多くに被害者意識がありますが、家族の健康の必要性を強調したり、加害者としての家族を伝えたり、とらわれの病を主張したりして家族としての問題を提起していきます。つまりアルコール依存症の家族として陥りやすい問題を提起し、家族の共依存関係を考え直し、家族の回復を求めるようになりました。
家族会慈友クリニックでは、家族の問題は、個別相談の継続や家族会の参加、また自助グルーープや他機関の紹介などへと展開しています。そして家族の変化からも、本人の断酒継続の行動が起こるのを待つことになります。家族会は、家族の行動を家族自身が振り返ったり、長年家族の中で作られてきた習慣を見直したり、家族としての機能を家族自身が考える場として行っています。また、アルコール依存症という病気についての正しい知識を得て対応を学ぶことができる教育の場とも言えます。
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