ノックビン(ジスルフィラム錠) アルコール依存症治療薬

アルコール依存症治療薬レグテクトから抗酒剤ノックビン(ジスルフィラム錠)に変更。強制的に酒を飲めない体質にする訳だから、抑止力の差は歴然。

二日酔いを科学する

      2016/12/10

二日酔いを科学する

二日酔いは、宿酔とも書く。広辞苑には、「酒を多量に飲み、酩酊状態の去った翌日に、なお残存する頭痛、悪心などの中毒症状」とある。「宵越しの酔い」といういきな表現もある。英語ではhang over, overnight drunkenness Jどといわれる。前夜の酔いが朝まで残るといっても、どの程度残ったら二日酔いなのか、前夜の深酒の酔いか何時間したら消えるのが普通なのかなど、なかなかその線を引くのが難しい。
二日酔いの発現機序については悪酔いと同じ機序で酒の中に入っているフーゼル油(アルコール発酵の際にエチルアルコールにともなって生じる高級アルコールのこと。臭いが悪い)のせいだろうとされていた。しかし、どうもフーゼル油説はあまり信用されなくなった。大体、深酒してから、10時間内外して、血中アルコール濃度はほとんど0に近くなってしまってからのことであるので、血中アルコールのせいにもできない。
症状‥〔主症状〕頭痛、めまい、顔面蒼白、発汗、時には悪心、嘔吐。〔副次症状]脈博もふえ、血圧もあがる。倦怠感、疲労感、そして何よりも無力感がとても強まる。
あの何ともたとえようのない虚無感はたまらない。キングズレー・エイミスのエッセイ「酒について」の中に、形而下的あるいは肉
体的二日酔いと形而上的あるいは精神的二日酔いか区別されているが、頭痛やめまいは肉体的二日酔い症状で、あの限りない無力感や憂うつ感、自己嫌悪と挫折感は精神的二日酔いということになろう。

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二日酔いの犯人捜し
二日酔いの犯人は単独犯か、複数犯かを決めるのは、推理小説もどきで面白い。
二日酔いの発現賤序がアルコールの直接作
用でないとすれば、「ははあ・・あれか」と思い当たる方も多かろう。その通り、犯人はアルデヒドである。悪酔いの張本人であったアルデ君はここでも一役買っているらしい。前記の赤羽先生が見つけたこの非行少年は確かに頭痛、吐き気を起こさせるので、アルデ君が二日酔いの、形而下的反応の「被疑者」であることは間違いないようだ。しかし、精神的二日酔い、すなわち形而上的二日酔いまでアルデ君の単独犯と決めつけてよいかどうか!
この方面の研究は、しかし残念ながらあまり進んでいない。大病というわけではないし、迎え酒でもすれば治るものに、高い研究費をかけて研究するなどということがむだだということなのかも知れないが、二日酔いを経験した人、また今後経験するであろう人は無数であることを考えれば、この不快な症状の原因をつきとめ、予防する手立てを研究する研究者がもっとあってもよさそうなものである。
刑事コロンボのごとく
京都府立医科大学名誉教授の小片重男博士は、アルコールの代謝に関する研究の権威であるが、先生は長い間の研究の成果から、二日酔いに言及されて、いくつかの新しい事実を示されている。先生はテレピ映画刑事コロンボのごとく、アルデ君の単独犯説に疑義を抱き、独自の追究
をはじめた。そして、まず二日酔いも一過性の病気であると定義する。
小片コロンボ先生の推理によれば、「アセトアルデヒドの毒性が二日酔いに関係するという説を実証するために実験を行ったが、血中アルコール濃度がほとんど0に近くなるときには、血中アルデヒドも0になり、二日酔いの症状を呈した人でもその値はけっして高くなかった。だから、アルデ君の責任は軽いと見立てられる」というのである。
先生の推理は次の動物実験にもとづく。
⑴マウスに大量のアルコールを一日投与するだけで、体の中の「水」の分布が変化する。諸臓器のうち、心、腎、肺、脳は。水ぶくれ‘となる。だが、一方、組織と結びつく水は減り出してしまう。利尿が促進されるにつれて、組織は水を失っていく。そこで、組織内の電解質のバランスか崩れる。
⑵ウサギに中毒址のアルコールを一日投与すると、心筋、骨格筋、肝臓のクレアチン量が急に減る。そして、血清タレアチンは急に増える。タレアチンは筋活動の指標である。だから組織からの減少はエネルギーの消耗を意味し、疲労のもとになる。
⑶ウサギに中毒量のアルコールを与えると燐酸代謝が旺盛になる。燐酸はエネルギー代謝に関与する重要物質であるから、この代謝が高まることは、大量のエネルギーの補給か必要なことを示している。
⑷急性アルコール中毒時には、血清中の遊離アミノ酸が変動する。グルタミン酸、アスパラギン酸は急激に減る。脳内グルタミン酸も減少する。すなわち、生体に重要なアミノ酸が減ることになり、体内栄養のバランスか崩れる。
⑸急性アルコール中毒では、低血糖がおこる。そうすると肝臓からグリコーゲンが動員されて血糖値の回復をはかる。肝グリコーゲンや筋グリコーゲンが減少し、脳、心のグリコーゲンも減る。血中の「ブドウ粕」が減るのを補うために、あちこちから応援が出されるが、そのために必要以上のエネルギーが消耗される。
また、アルコールが酸化されるときには、還元NADか生じるが、この還元NADが水素を渡す相手が焦性ブドウ酸である。二日酔いのときには、低血糖と血中焦性ブドウ酸の増加がおこる。また、血中乳酸も大量に増加する。そうすると血液が酸性に傾き、アチドージスとなる。
以上のようないろいろな変化のうち、どれがいちばん二日酔いに深い関係かあるのか、まだ、十分にわかっていないが、どうも、二日酔いは、脱水、エネルギー不足、低血糖、血液のアチドージスなどが原因になっていると考えられ、アルデ君の単独犯説はくつがえり、複数犯説が強力になったと見るべきであろう。
二日酔い退治

犯人が不明な間は、事件解決の手立てはなかなか進まないが、複数犯の片われでもわかるとその道もおのずから開かれる。だが、実際には、まだ理論的な二日酔い防止法はないし、起こってからの対策しか考えられていないのが現実である。
再び、キングズレー・エイミスによれば、肉体的二日酔いには次のようにして対抗せよとのことである。(「酒について」吉行淳之介他訳)。

⑴自己暗示法。目が覚めたら、こんなひどい気分になっていることはまったく幸運だと自分にいいきかせること。
⑵細君またはほかのパートナーが防にいたら、できるだけ猛烈に性行為を行うこと。
⑶今こそ大量に水を飲むこと。どうしても起きて何かをしなければならないむきは、起きて、熱い風呂かシャワーを使い、砂糖をかけないグレープフルーツ1個にコーヒーでそそくさとでかけること。
等々か書かれている。これらは体験に基くものであるが、わが国でも昔から熱い風呂に入るのがよいとされている。
風呂に入るということによる心理的効果と確かに血流をよくして代謝を促進させるという効果が二日酔いの改善に役立つのであろう。
エイミスは、そのほかに「河も食べないこと」「煙草を吸わないこと」「迎え酒をすること」などを刻明に書いている。「甘いリキュールの中にキュラソーを混じた酒をタンブラー一杯飲め」などとも書いている。「迎え酒」か本当に二日酔いの治療になるかどうか疑わしいが、頭痛や吐気に苦しむ人にとっては、一時的効果があることは確かである。理由は⑴心理的効果、⑵中枢麻酔作用、⑶一時的な血糖上昇効果である。しかし、その迎え酒がきれる頃に、再び不快感か襲ってくる。だか、すでに動き出したその日の活動が、体内の代謝調整をはじめてくれるので、どうやら救われるのである。二日酔いにかぎらず、血中アルコール濃度の下降か遅れ、悪酔いが残る場合には、少量のインシュリン注射とブドウ糖、ビタミン玖の静脈注射で、アルコールの酸化を促進させる方法もあ
る。これは医者の門を叩かなければできないことである。
二日酔いと柿の実
柿の実か酒の酔いを早くさめさせるという昔からのいい伝えがある。
柿を食べてから酒洽にのぞむとよい‘はまだしも、。柿の実を袖の中にひそませておくだけでも悪酔いが防げる・とまで発展する。袖の中で効果を発揮してくれればはなはだ都合かよいが、
これは、眉唾物である。
しかし、柿の実か悪酔い、二日酔いに効果があるのは、けっしてうそではない。前山の小片重引博士に再登場願い、その間の事情を説明してもらおう。
〔実験〕
①富有柿の実。下し金でおろし、搾った果汁を用いる。
②対照。蒸留水と柿搾り汁と等量の糖分(蔗糖0.76%、ブドウ糖6.17%、果糖5.41%)を含む糖液。
③アルコール。エチルアルコール10%液。
動物-ウサギ数匹

柿汁を与えておいた群(A)の血中アルコール濃度の上昇率は最も低い。次いでさとう水投与群(B)で、水投与群(C)ではアルコール液単独投与群と大差はない。しかし柿汁群のアルコールの血中からの消失時間は少し延長する。
そればかりか、血中アセトアルデヒドの上がり方も柿汁群(A)は最も低く、また、血中から消失する時間もはやい。
さて、この実験に示された結果の学問的な解釈は別として、巷間伝えられる柿の実の酔い予防効果はかなり確からしい。この実験で、さとう水群の血中アルコール濃度か上がりにくいことは、糖類の血中アルコール上昇抑制効果によるもの。
柿汁が、血中アルコールの濃度を上げないというのは、胃腸からの吸収を柿汁中のタンニンやペクチンか抑制することのためらしいし、また、柿汁中のカタラーゼやペルオキシダーセがアルコール酸化を助ける可能性もある。また、タンニンが胃の粘膜を収斂し、アルコールの胃の粘膜刺激作用を保護するためとも考えられている。
また、柿汁中のビタミンCは、急性アルコール中毒時の副腎機能低下の防止に役立つ。その外もろもろの効果が考えられるが、柿の利尿作用もそれに加えられる。
タンニンの効果ということになると、茶も同じである。熱い煎茶が酔いざめをさわやかにするのもそのためであろう。
酒説養生論の中に、「大豆を煮てその汁を飲み吐けばよい」「熱陽でうかいし、髪を数十回杭ること」「西瓜、銀杏、砂糖、丁子、じゃこう、鈷、蝦がよい」などと二日酔いの特効薬が並べられているか、そのうちのいくっかは、理由づけが可能なものもある。
しかし、二日酔い防止のために柿をたくさん食べて酒宴にのぞむのも、何となく味気ない。二日酔いにならぬ飲み方といえば、やはり、適度な酔いでやめることでしかない。
それができなくなれば、知らず知らずに「慢性中毒」に移行しているのである。転ばぬ先のつえは、二日酔いにならぬ工夫ではなくて、二日酔いにならぬ節酒でしかない。

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