ノックビン(ジスルフィラム錠) アルコール依存症治療薬

アルコール依存症治療薬レグテクトから抗酒剤ノックビン(ジスルフィラム錠)に変更。強制的に酒を飲めない体質にする訳だから、抑止力の差は歴然。

体の病としてのアルコール依存症

      2016/12/10

体の病としてのアルコール依存症

アルコール依存症になると心の変化ばかりでなく、体の変化が起こることは御承知のとおりである。「飲み過ぎて…胃潰瘍になった」「肝臓を悪くした」という話はよくきく。「飲み過ぎで頭がおかしくなった」とみずから認める人はいないが、体の故障の訴えはそれほど抵抗なく出るものである。だが、本当に酒は心臓・胃腸に悪いのか? アルコールの直接的な影響による身体の変化はすでに述べた。ここで述べるのはアルコール依存症に合併しておこる身体症状のことである。

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息切れはしないか
①ビールがつくるアルコール性心筋炎
ビールを飲み過ぎると心臓が大きくなるという指摘をしたのは、ボリンガー(1884年)という人である。その後、その原因についていろいろ調べられたが、アルコール性飲料のアルコール分のみでなく、その中に含まれる他の成分や蛋白質の不足にもよるらしいと考えられるようになった。原因はともあれ、心臓が大きくなって、心筋が変性を起こすのである。
そうなると、動悸、息切れかひどくなる。朝の通勤ラッシュの電車などでもまれるだけで、かなり息ぐるしくなる。脈も不整になる。飲酒後に急に呼吸困難が出現したりする。また、足のむくみ、頚静脈の怒張なども加わり、時に胸痛・胸部圧迫感もでる。
心電図の上では、はっきりした異常所見が出現する。重症になると心房拍動や期外収縮が頻発するようになる。胸部X線で心拡大と肺うっ血所見、心臓をつつむ心嚢に水が貯ったりしているのが見られる。
清酒で一日4、5合、10年の経過の後に出現するといわれる。
②インスタントラーメンとアルコール性脚気心
アルコール性脚気心はお新香にスルメで一杯などの低栄養の連続がもたらすビタミン馬の不足によるらしい。脚気なる病気がビタミン玖不足によることは、白米食の多いわが国で多発した過去の経験から、鈴氷海太郎博士らの努力により明らかにされたところである。
近年は食生活が改彷され、脚気の患者には滅多にお目にかかれなくなったが、このアルコール性脚気心は例外である。ことにインスタント食品が出廻るようになってから、ノシイカで一杯やり、インスタント・ラーメンで終わるという食生活かこの脚気心の発生を助長するようでもある。
アルコール性心筋炎と症状は似ているし、合併もあるといわれる。やはり、動いたあとの動悸、息切れと足のむくみなどで気づかれる。
脚気衝心といわれ、突然、襲う激しい呼吸困難か生じる。心電図でも異常があり、同性頻拍が特徴である。
③「つまみなし」で起こる不整脈
アルコール離脱時心症状群・不整脈は最も一般的に起こる。期外収縮・心房紬動・発作性上室頻拍等々いろいろな異常所見か出現する。心機能がそれに対応できなくなれば死に至ることになる。アルコールによる低カリウム血症、低マグネシウム血症によるらしいといわれる。
なにぶんにも、酒はカロリーがあるから、それだけでも栄養はとれるなどと非科学的なひとりよがりの判断かこの結果を生むことに十分留意してもらいたいものだ。

飲み過ぎと胃潰瘍ーその因果関係

話術の天才といわれた徳川夢声老か飲み過ぎの…胃潰瘍が生命とりになった話や酒豪をもって自他ともに任じるドイツ文学の大家の高橋義孝先生が禁酒をよぎなくされ、酒豪の地位を追われたのは胃や肝臓の障害であったと聞けば、酒もまた罪つくりなものである。

ある医科大学の臨床講義室にて
学生「教授、今日の患者はアルコール性胃炎ということですが、アルコールでそんなに簡単に胃炎になるのですか」
教授「アルコール性胃炎という診断名は昔からある。飲みすぎると胃がむかついて、食欲もおちる。諸君らも経験があろう。(笑い)ゼクチヨン(解剖)で、…胃に充血が見られ、胃粘膜に急性の炎症がおきているのが確かめられている。犬で実験しても確かに急性胃炎や時には小さい潰瘍が生じることもある。
アルコールの直接作用と吸収されたアルコールが胃の壁の神経の働きを変化させ、…同流の分泌を宜進させるためだという説もある。アルコールは胃液酸度を上昇させることも原因の一つに加えられる。だから、飲みすぎで容易に胃炎がおこるのだ」
学生「症状はどんなですか」
教授「急性胃炎の症状は、むかつき、胃の痛み、酸っぱい水がもどってくる不快なげっぷなどである。まれに、欧めば治るとばかり一杯やると血を吐いてびっくりする。時には大便時に血が下りる」
学生「では急性胃火だけで終わるのですか。それ以上には進行しないのですね」
教授「急性…口火のうちは用心もするが、しかし気を許して飲みつづけ慢性化すると萎縮性腎炎になる。欧洲者の数%に弛られるというくらいだから、そう多くはないが、慢性の…口痛、食事

後一時間くらいしておこる痛み、空腹時にもおこる痛み、不快なげっぷなどが主な症状である」
学生「その症状は…胃潰瘍と同じようではありませんか」
教授「アルコール性…H炎と胃潰瘍とは大体縁か深い。胃潰瘍の発生率はあきらかに飲酒群に多い。十二指腸潰瘍
はあまり差がない。アルコール回炎の繰返しが潰瘍に発展することもあろう。しかし胃潰瘍の成立機転については、心身医学の先生方は、心的なストレスが慢性的に加わると生じやすくなるといっている。有名なパブロフの犬の実験で、欲求不満が昂じると胃潰瘍か生じることは諸君も知っているだろう。酒は欲
求不満解消の妙薬であるはずだから、本当なら、心的ストレスの解消は胃潰瘍の予防になるはずなのだ。ストレス解消の妙薬も程度問題ということになるようだ。だから、アルコールはやはり潰瘍をつくる原因の一つになるといってよい」
学生「アルコール性胃潰瘍の症状は普通のそれと一緒ですか」
教授「もちろん一緒です。胃潰瘍の症状の特徴は、吐血か下血である。一度ならず、2度、3度
と起こる。大量に出れば貧血をおこす。上腹部の痛みは激しく、食後一時間くらいで起こる早発痛、2、3時間後におこる遅発痛、空腹痛など…口炎の症状とも共通するので、鑑別は素人ではできにくい。皮間にしくしくと痛むようになれば本ものである。便秘がちになるし、酸性のげっぷが出ろ。胃酸過多症くらいに思っていると手おくれになる」
学生「よくわかりました。教授、この患者さんは呼炎もあるようですが、アルコールと関係ありますか」
教授「イエスー・ アルコール依存症に合併する身体病で、諸外国で報告の多いのか原炎である。私がフランスの国立アルコール研究所に行ったときに、これがそうですと見せられたのも重症の
慢性脛炎の患者であった。
わが国でも最近多数の報告例かある。急性評炎の60%までがアルコール性のものという驚くべき数字を示している外国学者もいる。日本では10〜15%くらいあるといわれている。
慢性原炎になると「原石」という石が評臓中にできる。これができると10年も経たぬうちにホトケになる。脛石ができるまでのアルコール脈は平均9年といわれるから、長生きはできない」
学生「なぜ豚臓がやられるのですか」
教授[どうも、それはアルコールの胃や十二指腸への刺激で消化管ホルモンが急激に分泌され、その影響で胃酸分泌が増えることや呼液の分泌が障害されることなどいろいろな原因が重なって呼長がおこるらしい。
急性際長の症状は激しい腹痛である。左時服の痛みと発熱、吐き気、嘔吐などが主なものである。慢性になるとお腹の鈍痛、背中の痛みがだらだらとつづくので、他の疾患と見あやまれやすい。
しかし、呼長の診断には、血清及び尿のアミラーゼ活性を測るのが常設化されているので、その値か高い場合は要注意ということになる」
学生「臨床症状だけで評長と診断できるのですか」
教授「最終的には、腹腔動脈撮影とか十二指脳内視鏡とかの近代的武器で調べねばならない」
学生「よく分かりました」

肝硬変が待っている

ギリシアでは紀元前にすでにアルコールによる肝障害のことが書き残されていた。何といってもいちばん恐ろしいのはアルコール性肝硬変症である。
「世界で最も飲酒者一人当たりのアルコール消費量の多い国はフランスであるし、2番目イタリア、ポルトガル、スペイン、オーストラリア、ドイツとつづく。最も少ないのが、フィンランド、ノルウェーであるのだか、アルコール依存症有病数もこれに準じている。そして、アルコール依存症の有絹本
と肝硬変死亡率とはみごとな相聞を示していろ。
この事実から、ジェリネック先生は肝硬変死亡率からアルコール依存症の有病数を推定する式を考えた。

しかし、アルコールの常用でいきなり肝硬変になるわけではない。肝臓の強い入、弱い人で異なるが、一目日本酒にして5合くらいのむ人では、肝障害の発生率は商い。
肝臓の異常を知る法

このごろは素人でも知っている肝機能検査の血清トランスアミナーゼ(GOT・GPT)がいずれも上昇しはじめ、200単位を越えるようになると危険信号である。アルカリフォスファターゼの上昇は肝硬変の黄信号でもある。最近はγ-GPT(γグルタミル・トランスペブチダーゼ)という酵素の活性か肝疾患の診断に有力視されている。この酵素は肝臓から胆汁の流出が阻まれるときに血中で高くなるが、その外、アルコール依存症者の血液で高値を示すことが明らかにさ
れた。たしかに、それは事実で、γ-GTPの飢は普通は40単位以下であるが、大量飲酒すればするほど50〜100単位と高い値を示す。日頃、大酒している人が急性アルコール肝炎になると300単位以上になる。一般的にいってγ‐GTP値はアルコールを飲んでいることの指標にもなる。GOT・GPTと同じくらいに肝疾患の診断に役立つかどうかはまだ疑問だが、どうも酒飲みかどうかの診断にはかなり役立つようである。「しばらく飲んでいません」とシラを切
っても、γ-GTPはうそ発見器の役目をしてくれる。

肝硬変への第一歩、脂肪肝
アルコール性脂肪肝というのがある。脂肪肝は、アルコール以外に毒物・薬物、栄毀障害、肝炎からの移行などでも生じる。しかし、その発生機序に関しては次のような学会討論かあった。
ところ: カナダ、オンタリオ、アルコール薬物依存学会
と き: 1973年十月
ひ と:米ニューヨーク市立大学リーパー教授

「アルコール性脂肪肝患者に禁酒を命じ、肝の病的所見が消失したのちに、十分な栄養補給とともに再び飲酒させたところ、脂肪肝か再発した。動物実験でも、用いたラット犬、ヒヒに栄養をたっぷり与えなから、長期にわたり酒を飲ませたところ、ヒヒでは十数匹のうち2匹に肝硬変を
認めた」とリーバー教授は胸を張った。
この講演に対して、ハワイ大ハートロフト病理学教授らは、「いやいや、アルコールの一次障害説は正しくない。やはり、2次的な栄養不足か肝障害の原因であろう」と反諭
した。さて、どちらが正しいか学問の世界の論争だが、この場合、すぐに軍配をいずれかに挙げるわけにはいかない。しかし、「食べながら飲めば、肝臓によい」といわれた定説はいまや風前の灯となりつつある。
アルコールはその代謝過程で、アセトアルデヒドから酢酸になり、これか脂肪酸の合成に使われること、また、その代謝過程で生じる水素原子を脂肋酸やαグリセロ燐酸にわたして、3グリセリド類をつくる。これが脂肺肝の形成にあずかることなどが予想されるのである。
そこで、難しい理4回は抜きにしてもアルコールと肝障害の関係については、アルコール→脂肺肝→アルコール性肝炎→肝硬変という過程を考える人が多い。
脂肪肝は肥満、糖尿病、低栄養、薬物中毒などでも起こるが、一日に5〜6合飲んでいる人では5年未満で54%になるという統計資料もあり、アルコールとの関係が最も深い。ただ、すぐに重い症状が出るわけではなく、食欲低下、倦怠感くらいであるので気がつきにくい。そこで、さらに飲みつづけると脂肺肝は減って、肝炎、肝硬変がふえてくる。1日5合程度を10〜15年飲んでいるとm肺肝は20%に減るが、肝炎は40%、肝硬変20%となり、15年以上になると脂肺肝は一3%、肝炎32%、肝硬変5一%にまではね上がる。
肝臓に脂肪滴がたまっているだけが脂肪肝なのだから、脂肪肝は適切な治療と飲酒中止でかなりよくなるというのが、一般的見解である。この統計資料だけ見ると、まず脂肺肝が先行して、肝炎になり、肝硬変になると考えることも可能である。もちろん直結的に進行するのではなくて、肝硬変になるには別の何かが働くという説もある。
脂肪肝から肝炎ヘーその道は遠くない
さて、アルコール性肝炎は、脂肺肝の進行形というわけではないらしいが、常習飲酒者に急激におこる急性肝炎の一つである。常習者の飲酒量が急激にふえたときに吐き気や嘔吐、食欲不振、上腹部痛、肝肥大、肝臓部分の圧痛などか衷れ、それとともに発熱が起こり、黄疸が出る。眼球結膜が黄染するので気かつく。検査をすれば、白血球がふえ、貧血が認められ、鳥の羽はたくような大きい振戦やときには腹水も証明される。また、ひどいときには軽い意識混濁が生じ、精神
的に不安、不服状態になる。急性に肝臓の機能が低下する肝不全がおこる。1961年にベケットという人か「急性アルコール性肝炎」という名をつけるまでは他の名前で呼ばれていた。
「肝生検」という方法が広く行われるようになってから、生きているうちに組織学的診断ができるようになったか、のように中心静脈部位の組織の壊死、多核白血球などの浸潤、肝細胞周囲の繊維化など広汎な変化か起こっている。重症なものでは死に至ることもある。
また、肝臓にアルコール硝子休(マロリー体)といわれる細胞の特異な壊死像が生じる。このものは肝生検材料を電子顕微鏡で調べると層状、管状の細繊組様構造物であることが認められている。このアルコール性肝炎もアルコール依存症の合併症として、アルコール依存症者の10〜20%にみられる。肝硬変を合併していなければ、大部分が脂肺肝を伴っている。死亡率は10〜75%と差が大きいか、死亡例は肝硬変の合併例に多い。
禁酒、または節酒者は飲酒継続群よりも長生きする。肝硬変は、飲酒中止と高蛋白、高ビタミンによる治療くらいしか、よい治療法はない。
なれの果て病-‐肝硬変
アルコール性肝硬変症かアルコールの消費量と相関することから、アルコール依存症の予測者数が算出されるほどであるから、アルコール依存症の身体的合併症として「アルコール性肝硬変」は重大な疾患である。
一般の肝硬変の60〜80%はアルコール性であるという欧米の統計は、わが国にはただちにあてはまらないが、30%はあるといわれている。アルコール依存症者の8〜10%がこれになる。
だか、肝生検で調べると30%くらいに認められる。
肝硬変は、急性アルコール肝炎よりもいっそうひどく肝細胞の壊死が進行し、「肝腫大型」と「肝萎縮型」と「正常型」の3つに分けられるが、図18のように全体的に細胞の壊死が進んでしまうと肝臓は萎縮してしまう。
アルコール性肝硬変は一般に脂肪性肝硬変といわれ、小葉内の肝細胞の脂肪化、紬静脈の圧迫像が見られ、それが進行すると図のような壊死性肝硬変になる。これはもはや構造を失ってしまい荒涼とした廃墟か砂漠の観がある。それらの組織像からすれば、やはり肝障害のなれの果てであって、行きつく所へ行きついた終着駅といえる。
肝硬変は死の宣告
肝硬変と診断された人で飲みつづければ、生きられる期間はまず5年である。それでもその時点でやめれば、どうやら70%は5年後も生存できる。しかし、死は君の前に口を開いている。
肝硬変になれば、まず腹水か著明になるし、休か衰弱してやせてゆく。また肝臓の血流か悪くなり、静脈瘤などができると、それがやぶれて吐血するようにもなる。やかては、肝性昏睡といって、昏睡状態から回復しないままで死んでゆくことになる。
肝硬変の診断上よくいわれるのは、腹壁の静脈が、ちぢれ毛頭のように浮き出して見えるようになる所見で、これにはギリシア神話のメズサの頭の故事をとってその名がつけられている。また、上半身にくも状血管腫という細い血管のくもの巣のような放射線状の走行か見られるようにもなる。
「なれの果て」病にだけはなりたくないと思う諸君よ、時々、君の肝機能を調べてもらうことだ!
このごろは、アルコール依存症者で、肝囲変に発展する
人は皿ウイルス(オーストラリア抗原の関係する肝炎をHBという)感染者に多いという学者も出てきた。しかし、まだ確定的な結論は出されていない。HBウイルス感染者が飲酒をすると肝硬変になりやすいともいわれている。さて、心配になってきたと思う人は、臨床検査を受けることだ。

アルコールは万病をつくる

ウェルニッケ病という脳炎がアルコール症者におこる話を前にしてあるか、ウェルニッケ病やコルサコフ病によく合併してくるのが、多発性神経炎である。欧米での報告例は多いが、わが国ではそれほど多くはない。
いきなり発症する病気ではないか、だいたいが足にくる。足先からはい上るように上にのぼってくる。まず、足に力か入らない。びりびりとしびれ感がある。ときに灼
熱感のある痛みがおこる。触った感じか鈍くなる。場合によっては触れられるとぴりぴりした不快感(パレステジー)が生じる。足の力が入りにくいので、ふらついて歩きにくくなる。深部知覚といわれる筋肉や腱の知覚も鈍るので、歩行かもつれふらつく。手や足に汗をかく。浮腫がおこる。皮膚の色がうす黒くなる。神経伝導速度の検査を受ければよりはっきりする。
症状としては脚気ときわめてよく似ている。放置しておけば、神経の髄鞘、軸索の変性が進み、回復が困難になってしまう。
なぜ、こんな病気かおこるのかについては諸説があるが、栄養障害によるビタミンB欠乏説が有力である。ビタミン玖の補給をすると回復することやビタミン補給で飲酒させると発症しにくいことなどがその証拠になっている。
わが国では報告が少ないか、その他アルコール性ミオバチーというのがある。四肢の筋力低下、骨格筋の疼痛などかおこるものである。また、「ペラグラ」という皮膚病もある。皮膚に斑点状に色素沈着が出る。表面が暗赤褐色になり、くずれるようにもなる。不眠症や気分の抑う
つ、つかれやすさが目立ってくる。下痢などもおこる。これはニコチン酸の欠乏によると考えられているもので、アルコール依存症者に生じるものである。また、「アルコール性弱視」というのもおこる。これは硯神経の萎縮によるものだが、この場合もビタミンB1、B2、B6の欠乏が原因の一つに考えられている。
アルコール、すなわち原因物質が、宿主に入り込み、いつかは宿主の屋台骨をゆるかすようになるのだか、寄生虫のように宿主の休の中に、暮夜ひそかに入り込むのではなくて、宿主の方が相手を手まねきして呼び込むのである。やがて相手と抜きさしならぬ仲になり、その結果絹張を伐すに至る筋書きは、詩人ボードレールとその情婦ジャンヌ・デュヴァルとの関係にも似ている。
「黒色のヴィーナス」といわれた混血の女優デュヴァルと同棲後、父の遺産の大半を蕩尽し、準禁治産までおちたポードレールは、情婦を吸血鬼と呼び、毒婦とののしりながら、「すでに久しく、そなたを僕は愛している。
理詰めの生れつきなので、お解りでしょう。
同じ「悪」でも最上級、
完全な怪物を際して愛する僕なので、
つまりそうだよ! 怪物め、そなたを限は愛してる!」(堀口大学訳「悳の単」より)
と叫びつづけるのだ。
「そなた」の文字を「酒」に置きかえて見たまえ、酒こそ「毒婦」とわかるであろう。結局、ボードレールは病苫と竹困とにさいなまれ、やがて卒中にて.‘の…匹を去るのである。デュヴァルならぬ酒を呼び込む君よ! 心せよ。

魅せられた魂ー依存者の性格

惚れた弱みでずるずると20年のくされ縁をつづけたボードレールと情婦の関係ではないが、酒の甘い香りに誘われるとそれが毒とは知りなから、つい手が出るのがアルコール依存の本質である。悪いとわかれば、手を明ればよいとは頭ではわかるか、それができないのが人間の業でもある。しかし、本当にそれがいのち取りだと認識すれば、止めるのも人間である。そこに「止められる人」と「止められない人」の区別ができる。人柄だけの問題ではない。それをうながす環
境とそれを抑える環境もあるはずである。
アルコール依存症は依存によって成り立つが、依存を規定する心理的要因は性格要囚と環境要因に2大別できる。
甘えと依存

性格要因としてはどんなものがあるか、まず、考えられているものをあげてみよう。「依存」には甘えん坊がなりやすい!
甘えと.″よりかかり″とはきわめて共通したものがある。困ったとき、苦しいときにはそれから逃れたいというのは誰でももつ欲求だか、そのとき乎をさしのべてくれる者があれば、それに頼るのは人情である。しかし、子供の頃から、そのような甘え、よりかかりが可能な場合は、どうしてもそれにすがって生きるようになる。
性の心理学・精神医学者として有名なフロイトは、人間の発達段階を性の欲求の柱々相と対応させた。生後間もなくから2歳までの幼児期は「口唇間」と呼び、唇で吐の喜びを感じる。泣き叫ぶとは親が与えてくれる乳房にすがる。その口斡から得られる快感、また、けのふところのぬくもりに快い眠りに誘
われる。アルコール依存症者の甘えは、過保護なやさしいほの保育へのノスタルジアであり、あのほの乳房の感触への退行なのだと説明する学者がいる。
甘えの要素は、そればかりではない。乳幼児期に泣けば何かが与えられる。自分の望むものはなんでも得られると思い込んでしまった人間か成人する。これぞ自己中心性のかたまりのような人間になる。自分でそう思えば、思うものになれる。なろうとする。そこから、自分を本来の自分よりもよく鼠せようとする自己顕示性も生じる。だが、現実はそれをそのままに満たしてはくれない。そんな人に人生のなんらかの試練か加わると、何でも陽たい、何でも得られるという考えの裏返しの「俺はだめだ」「自分か悪いんだ」という自己批判や自責の念が表面的に出現する。
本当の自責なら、その苦悩から立ち上がれようが、偽りの苦痛であるので、何かによってまぎらわそうとする。酒に走るのが最も安易な解決になるのである。
俺は父のようになりたいと父親との同一化をめざしたものか満たされない場合、冷やかな父に対する同一化の拒否から、みずからの生きる鏡を見失う場合、母との同一化を無意識の上で求める。そして、精神的には女性化してゆく。そして闘争の場から逃れるようになる。
女性化することによって、より強い男性との同性愛を求めるか、女性でも男性のようなしっかり者を求めるようになる。これを潜在的同性愛傾向として、フロイトの「肛門期」固着と解釈する人もいる。
以上の依存者の精神衝迫の形成過程を精神分析的に説明したのはハイマンという著名なアルコール依存症の研究者であるが、彼のまとめを見てねこう。
⑴アルコール依存症者には、乳幼児期に存在した全能感(すべてが満されるという感情)の感情が強く残っている。人も神も彼をコントロールすることはできないという無意識の信念をもっている。したがって、この全能感が他人から試されたりすると、ひどく感情を傷つけられ、なんらかの空想的な全能感を回復しようとするが、この回復までの間はひどい困惑状態におちいってしま
⑵アルコール依存症者には、幼児期のつよい欲求、つまり母親や大人からなにかを与えられたいという欲求がつよく残っている。こういう欲求が満されないと失意やうつ状態におちいり、それを克服しようとして、再びアルコールを求めるという悪循環をくり返す。このような欲求は幼時には最も身近な母から与えられるが、十分な満足が与えられないと母との同一化によって女性化の傾向が生じる。そして、かつてもっていた全能感が、これと反対の完全な無能感になってしまう。
また、これに加えて幼時に存在した「すべてか無か」という態度が伐っているために、酒を飲む節度がなく、飲まないか、飲めば行くところまで飲んでしまう。
⑶アルコール依存症者には、過度に寛大な親か、反対に暴君的な親のしつけを受けたものが多く、このために彼らは一方ではだらしない反面、極端に清潔でありたいという強迫傾向の両者が同時に存在する。自分をコントロールするという点でも、表面的な原則にこだわる傾向かつよい。
⑷アルコール依存症者は同性愛的傾向がある。彼らの親の性的な「しつけ」があまりに厳格であるか、遂に誘惑的であろと、ふつうの性的同一化ができず、無意識の同性愛傾向が生じる。
⑸アルコール依存症者の自罰傾向は、父親との同一化、または同一化する対象ができないと攻撃欲求がつよく抑制されて生じる。アルコール依存は慢性の部分的自殺だといわれるゆえんである。以上、結局、自己破壊傾向をもち、自我の機能の弱い欠陥者がアルコール依存症への道をたどるこ
とになる。ちなみに、アルコール依存症者に口斡愛的傾向者というレごアルを貼ったのはツワーリングという先生である。本態的、一次的なアルコール依存症者は、その精神構造は口.盛期以上に発展しないと手厳しくのたもうたのほヒキンズ先生である。
さて、以上のことは、しかし、アルコール依存者の何人かには当てはまるが、すべてに当てはまるわけではない。
だから、アルコール依存症者には、依存者になりやすい性隋、性質があるはずだろうときかれる。甘えん坊の誰もかアルコール依存になるとすれば、ロ参入の心的特性に「甘え」があることを指摘している土居健郎東大数校の説に従えぱ、日本人一億総アルコール依存症者になりうることになる。そんな極論は非科学的なので、もう少し科学の場に立ちかえって話を進めよう。

アルコール依存症者は性格異常者か

ひところ、この論議が盛んに行われたことがあった。性格破綻者がアルコール依存症になるのだ。しっかりした人間はならないではないか!統計をとるとアルコール依存症者は意志簿弱者が多い。昔の精神科の教科書を見ると判で押したようにそう書いてある。
アルコール依存症者に接すると確かに、「もう少し、しっかりしていてくれたら」という家人の訴えも無理からぬと思うような人に会う。だいたいが、他人のせいにする。「女房が悪い」「親が悪い」「会社が悪い」「上司か悪い」「社会が悪い」「私は精一杯やっているのに皆が認めない」「や
りたいことをやらせてもらえない」。
「君は悪くないのか」「やれることをしっかりやって認めてもらったら」等と問いかけても、「そんなこと百も承知ですよ」と答える。
こういう人達の心理テストをやってみるといろいろなことかわかる。

⑴MMPI(ミネソタ多面人格診断)というテストを用いた学者によると、アルコール依存症者は反社会および非社会的傾向が強い結果が得られるという。
⑵要求水準テスト(自分がどれだけテストができるか、あらかじめ予告させて、結果と比較してみる)をやると、自己能力過大評価の傾向が認められる。
⑶ロールシャッハ・テスト(投影法といって、インタのしみの図を見せて、そのものが河に見えるか自由に意味づけさせて、その反応を整理し評価する)を行うと、情緒不安定、感精米熱性が認められる。また、衝動性、感情反応の無統制、不安に対する防衛を働かせることができにくい。

⑷アルコール依存症者は不機嫌で抑うつ的なタイブ、精神的に未熟で子供っぽく、気分が変化しやすいタイプ。ヒステリー的で被暗示性がつよい。

本当のところはどうなのか
分裂気質、循環気質、妄想傾向、類ヒステリー傾向、心気傾向などあらゆる結吸が出されていることは、実は性格傾向として抽出できるものがない″ということでもある。アルコール依存症者は性格異常者(精神病賢者)だと決めつける根拠は乏しいのだ。ただ、性格異常者はアルコール依存症になりやすいという逆のことはいえるようである。
だから、アルコール依存症になりやすい決まった性格かあるわけではなく、誰でもなりうるのだが、どちらかといえば、気の弱い、意志の統制力の乏しい人かなりやすいくらいしかいえない。
したがってアルコール依存をつくるのは、別の因子を考えねばならない。米倉育男博士は、依存者の性格傾向として、次の4つをあげている。これは大いに
参考になる。
⑴劣等感をもちやすい、物事を気にしやすい、涙もろい、負けぎらい。
⑵恥ずかしがり、淋しがり、引込みがち、気が小さい。
⑶意志が弱い、怠けもの、根気がない。
⑷苦労なし、悩みなし。
⑴は過敏、劣等感、交際下手、⑵は抑うつ気分、孤独、自己不確実、虚無的、⑶は意志薄弱、
⑷は楽天的、自己批判力欠乏のものということになる。
準備因子は何か
環境要因と一口にいってしまえば、なるほどと思われる向きもあろうが、環境か悪ければ、誰でもアルコール依存症になるわけでもない。酒が飲めるということか条件だし、酒を飲み、そして飲みつづける動賎づけか重要なのである。
動哉づけのいくつかの要因のうち、社会の文化的背景は確かにその一つになる。フランスはもちろんのこと、わか国で東北、北海道が酒の消費量が他の地域に比して多いことは、気候もその要因になるだろうし、酒づくりに必要な原料も関係するだろうし、農業という労働が酒を要求することにもなる。また、文化・社会的に祭りや祝事に酒か交際の仲立ちとして重要視され、それを飲むことは、子供にとってもけっして悪いこととは受けとられなかった。それらはアルコール依存を生む準備因子として重要なものなのである。
「つき合いが悪い」「酒も飲めない奴」という社会的評価は、男としての誇りを傷つけられる。
社会・文化的要因として、社会構造の特徴は重要であるが、社会の小単位としての家庭内構造も重要である。すなわち、家庭内に飲酒の勣機づけの要因がある場合がある。アメリカのアルコール中央委員会はアルコール依存者を生じやすい家庭内条件として次の5つをあげている。
⑴家族内にアルコール依存症者か、禁酒主義者がいること。父も兄も飲むことが依存をつくるに役立つ。その反対もある。禁酒主義者かいること。飲酒を罪悪視することに対する反発がアルコールヘと走らせる。
⑵配偶者またはその家族にアルコール依存症者または禁酒主義者がいること。女房の親が飲み助である場合のことだ。
⑶欠陥家庭や問題の親のいる家庭、特に父が不在か、拒絶的であり、しかし処罰的でないこと。
15歳以前に親の一方が死に、片親で育てられること。父が犯郭者であったりする家庭、または家庭内の父子の人間関係の歪みがある場合、また、頑固な父、やさし過ぎる母の組合せなどか依存を生む。
⑷大家族の末っ子か、同胞のうちの若い半分に屈すること。
統計的にも末っ子、ひとりっ子がアルコール依存症者の中に多い。アルコール依存症者の10%はひとりっ子、姉妹の中の一人息子20%、第一子27%、末子36%という数字を示している人もいる。
⑸一世代以上まえに、うつ病を繰返す女性の親類があること。これはあとで、うつ病とアルコール依存の関係を説明するときに述べよう。
⑸を除けば、いずれも依存の勣機づけとしての意味をもつことになる。

アルコール依存症をつくる妻

さて、やや話は横道にそれるか、家族との関係ということになると、常に引合いに出されるのが妻君のことである。夫がアルコール依存症者になる動機づけの一つにされるのが、厳しい「しっかり者」の女房である。家庭生活で息がつまる。頭の上がらぬ亭主の逃げ道に酒が使われるということになる。
アルコール依存症をつくる妻!本当にそんな妻君があるのだろうかときかれる。あるといえばあるだろうし、ないといえばうそになる。
従来はどちらかといえば、妻に同情的で、夫の犠牲者と見る見方か一般的であった。しかし、アルコール依存症者の妻の研究をするうちに、妻の闘にもマゾヒズム的傾向と冷感症で夫を支配しようとする傾向があるのを見出した人がいる。
そして中には、夫が酒を飲まなくなることを求めるよりは、夫を感情的に圧倒して、むしろ酒を飲みたくさせているとさえ考えられるものもあるという。そんな妻は、夫が酒をやめるとむしろノイローゼ気味にさえなる。なかなか、手きびしい妻への批判である。概して、こうした妻に
対する夫は受動的で、むしろ女性的な男性である。
こんな報告が多くの研究者から出されて、これをワーレンという研究者が、アルコール依存症者の妻のタイプとして4つに分類した。
⑴受難者型・夫の暴力に対し、むしろマゾヒステ″タにこれを受け、殉難者として苦しむ妻
⑵支配者型・失に命令し、支配しようとする妻
⑶逡巡者型・母親的存在で、愛情と拒否の間をゆれ動く妻
⑷懲罰者型・道徳的で、きびしく夫を処罰する妻
これらのタイプは、夫と結婚後にその態度か変わってゆくのか、あるいは、そのような妻を男性が選ぶのか、そのいずれかは判然としないが、意志薄弱傾向があると、むしろ己を支配し、母親のようにつつむ相手を求めるという選択性がかなり強いように思われる。
アルコール依存症をつくる社会

さて、ここでは、社会・文化的背景という問題に立ちかえって、社会のアルコール問題に対する意識が、アルコール依存症の勤賎づけにどのように作用しているかを探ることにしよう。
すでに成人や高校生らの意識調査の所で一部触れたが、もう一度、ゴ般人は酒に対する価直観をどのように抱いているか″ながめてみることにする。前掲の額田教授のデータによると「酒
は人生に必要か」と成人に問うと、男性の36・8%は″イエス゛と答える。女子でも8・3%
は肯定している。。不必要‘と答えている者は男性で8・3%、女性で28・1%、時には必要とやや限定した肯定者を加えると男性は86・8%、女性でも56こ%とかなり寛大である。以上のように、一般的にいって、わが国では酒は人生に必要なものとして受け入れられている。
このような状況の中で依存者か発生しても無理からぬことである。
国立精神衛生研究所の加藤正明博士は、動員・宿主・伝播(保菌者の媒介)という3つの因子がアルコール依存の地域社会内での発生に関係するといっている。いうなれば、誰でもが保菌者となっているので、それが非飲酒者を飲酒者に変えていくことかありうる。その湯は、家庭であり、社会であるが、タイのような仏教国で、飲酒がタブー視されている社会は別として、わが国のように比較的飲酒については寛大な容認的風潮のある国では、比較的多くの依存者が発生してよいはずである。しかし、従来の統計からすれば、けっして欧米諸国に比して多数であったとはいえなかった。だが、最近20年間くらいのわが国のアルコール依存症者の数は急激に増加している。すでに述べたとおり、額田教授のわが国のアルコール消費量からする試算によると、約10
0万人の日本人が一日150ml(純アルコール量、日本酒換算鼠5・4合)以上のアルコールを飲んでいることになり、日本男子のアルコール依存症者数は72万で、女子を加えると80万と推定されるに至っていることは、ゆゆしい大事であり、社会・文化的背景がアルコール依存症者を生むことに関与していることを・見通すことはできない。
アルコール依存症は個人の疾患であるとともに、社会の生み出す疾患でもあるのである。

 

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